







光嶋 裕介(こうしま ゆうすけ)空間構成担当
1979年、アメリカ・ニュージャージー州生まれ。建築家。一級建築士。
早稲田大学理工学部建築学科卒業。2004年同大学院を修了し、ドイツの建築設計事務所で働く。
2008年帰国後、独立。建築作品に《旅人庵》(京都・2015)、《森の生活》(長野・2018)など、著書に、『ぼくらの家―9つの住宅、9つの物語』(世界文化社)など多数。神戸大学で客員准教授、大阪市立大学などで非常勤講師を務める。2015年、Asian Kung-Fu Generationの全国ツアー《Wonder Future》のステージデザインを担当するなどその活動は多岐に渡る。
Photo by Shuhei NEZU
海遊館とは
どんなところですか?- 海遊館はジンベエザメに代表されるように、圧倒的なスケールで海の世界を身近に感じることができる楽しい場所です。家族連れが多く集う大阪を代表するような観光名所だと思います。
今回、海に住んでいるというテーマ
ですが、
「住(すまい)」とは
どのようなものだと思いますか?- 「住まい」は家族の居場所でありながら、命の根源に関わる衣食住の営まれる大切なもの。「住まい」の建つ場所とコミュニティー(社会)と深く関わりながら人々の記憶の器としての役割を果たすもの。
生き物で例えるなら、
あなたはどの生物の住み方が
好まれますか?- 肺呼吸する人間は海の中では暮らすことができませんが、「メソンヤドカリ」のように貝殻を背負いながら身を守りつつ、イソギンチャクなどとも共生している弱き者が創意工夫しながら生き延びる住まい方には深い学びがあります。ヒントは感覚を研ぎ澄まし、環境といかに対立しないで「同化」することにあるように思います。
今回の展示に関わる中で、
気をつけられていたことは
何ですか?- 空間構成をやらせていただくにあたって、水槽の中に広がる海の世界を少しでも拡張し、陸に暮らす人間でも皮膚感覚として感じられるような「あわい」の空間をイメージしました。人間の「住まい」に使用される素材を組み合わせて、雲のような、あるいは波のような柔らかいテキスタイルで境界線を曖昧につなげることで、いくつもの表情を持った空間を目指しました。
どんな方に展示を
見ていただきたいですか?- もちろん、子供たちです!子供たちの想像力には無限の可能性があります。海の世界と人間の世界に情緒ある「ゆらぎ」を感じてもらえたら何よりです。今回の展示が一つの風景として一人でも多くの子供にとって記憶に残るものとなることを強く願っています。

石神 夏希(いしがみ なつき)物語担当
劇作家。1999年より劇団「ペピン結構設計」を中心に活動。近年は国内各地の地域や海外に滞在し、都市やコミュニティを素材とした演劇やアートプロジェクトを手がける。
NPO法人「場所と物語」理事長、遊休不動産を活用したクリエイティブ拠点「The CAVE」の立ち上げおよびディレクション、「東アジア文化都市2019豊島」舞台芸術部門事業ディレクターなど、空間や都市に関するさまざまなプロジェクトに携わる。
撮影:黒羽政士
海遊館とは
どんなところですか?- 海のロマンに触れられるところ。「環太平洋」という壮大なテーマからもダイナミックな水槽からも、人間がすべては見ることができない海の広さ・自然の大きさを感じて、ゾクゾクわくわくします。「未知」に出会い、想像力を掻き立てられる水族館だと感じます。
今回、海に住んでいるというテーマ
ですが、
「住(すまい)」とは
どのようなものだと思いますか?- 一番よく眠れるところ。自分の体や心の一部のような空間。旅先でふと「帰りたいな」と思い出す場所や人。
生き物で例えるなら、
あなたはどの生物の住み方が
好まれますか?- カイカムリ。仕事で旅が多いので、お気に入りの家をいつも背負っていれば、いつでもどこでもリラックスできていいなあ…と思います。海と陸、両方で暮らせるトビハゼにも憧れます。自由な生きかたと安心できる居場所、両方ともほしいのだと思います。
今回の展示に関わる中で、
気をつけられていたことは
何ですか?- 海遊館の展示や飼育員さんたちのお話から、海の生き物への深い尊敬の念を感じました。海の生き物たちが一生懸命に生きる様子は愛らしかったり、ユーモラスだったりして、見る人を笑顔にしてくれます。と同時に、そこには驚くべき知恵や感性が詰まっています。私も尊敬をもって生き物たちの個性を伝えたいと思いました。
どんな方に展示を
見ていただきたいですか?- 子どもから大人まで楽しめる絵本のような世界を目指したので、どなたにも見ていただきたいです。ご家族連れ、友達同士、恋人同士、ひとりでぼーっとしたい人、海の世界にゆっくり浸りたい人など、いろいろな方がそれぞれ違う楽しみ方をしてくれる様子を想像しながら書きました。それは自分のまわりの大切な人たちや、いつかの自分でもあります。個人的には自分の両親のように長年一緒に暮らしたご夫婦に見ていただけたら嬉しいです。

長嶋 祐成(ながしま ゆうせい)イラスト担当
1983年大阪生まれ。魚譜画家。京都大学総合人間学部卒。現代思想を専攻。
卒業後、思想と社会の接点を模索して服飾専門学校に進学、クリエイティブを学ぶ。同卒業後はアーティストブランドに一年間勤務ののち、広告・コミュニケーションの業界へ転職。7年間ディレクターを勤める。その傍ら行なっていた画業を2016年4月からは本業とし、石垣島へ移住。
海遊館とは
どんなところですか?- 僕は大阪出身なので、海遊館がオープンしたときの街全体の高揚感はよく覚えています。小学2年生の時のことで、同級生の中でもいち早く訪れた子たちは皆得意げでした。僕自身も夏の陽射しの下、長蛇の列を並んでようやく最初の「日本の森」に足を踏み入れた時のワクワクは忘れられません。今でも帰省するとたまに訪ねますが、大水槽を縦に見てゆくことの際立った独自性と、世界各地の水辺を網羅した普遍性のバランスが抜群だと思います。
今回、海に住んでいるというテーマ
ですが、
「住(すまい)」とは
どのようなものだと思いますか?- 住まうこととは、「この世界に居場所を作ること」。その過程で他の個体や種と協力したり譲ったりするだけでなく、他者から奪ったり、他者を押しのけたりする必要も否応なく生じます。どこまでは他者のものとして譲り、どこからは自分のものとして奪うのか。その問いに安定した答えはなく、常に問い続ける中で自分の立ち位置を柔軟に決めてゆく。その、瞬間瞬間の結果が「住まい」なのだと思います。
生き物で例えるなら、
あなたはどの生物の住み方が
好まれますか?- しっかりとした巣を作る生き物はとにかくその巣を守り、維持することに力を注ぎますし、巣を持たない生き物はその分常に周囲にアンテナを張って危険から身を守ります。僕自身は住まいを整えるのが苦手だし、かといって巣を持たずに生きる逞しさもない。それでも困らずに生きていけるのは人間の社会性の賜物なわけで、つまり「好み」で言えばやっぱり人間の住み方に優るものはないです。
今回の展示に関わる中で、
気をつけられていたことは
何ですか?- 自然とは基本的にそっけないもので、人間がどんなに思いを寄せようとも、あるいは逆に傷つけようとも、ただ「あるようにそこにある」だけ。そのことに対して敬意を感じますし、同時に「だから人間もまた、自分がどう振る舞うかは自分で考えて決めよ」と突き放されているような畏れも感じます。そんな畏敬の自然観を背景に、生き物に対する一方的な感情移入や解釈に適切なブレーキをかけることを常に意識しました。
どんな方に展示を
見ていただきたいですか?- 「こんな方に見ていただきたい」という希望は僕の中にはありません。ただ、もしも展示をご覧いただくことで魚というものに対する新しい興味のアンテナが立ったり、その興味をお家に帰ってからも、あるいは次の日にも持ち越せたりするようなことがあれば、とても嬉しいです。

北谷 佳万(きただに よしかず)飼育展示担当
飼育展示部魚類環境展示チームに所属。海遊館の開業前から飼育業務に従事し、主にジンベエザメやイトマキエイなど大型魚類の長距離輸送などに取り組んできた。今回の特別展示のテーマは生き物たちの住まい。独自の展示空間から人と生き物に共通する住まいや暮らしの様子を皆さんに重ね合わせ、共通点や違いを発見し、何かを感じてもらえればと考えています。
海遊館とは
どんなところですか?- 世界中のお客様が訪れる、環太平洋各地域の生き物と環境の両方を見ることができる場所です。
今回、海に住んでいるというテーマ
ですが、
「住(すまい)」とは
どのようなものだと思いますか?- 生き物が生きていくために必要な場所であり、一息ついて体を休められる場所。
生き物で例えるなら、
あなたはどの生物の住み方が
好まれますか?- カクレクマノミとハタゴイソギンチャクは一緒に暮らし、互いに協力する関係を持っています。そのような関係にあこがれます。
今回の展示に関わる中で、
気をつけられていたことは
何ですか?- 水槽の設置には「住」を感じられる独自の展示空間の中で、生き物たちの住まう様子を感じ取れる工夫を行いました。たとえば水槽の外側に底砂が4面から観察できる島型水槽や、蓋をしない水槽つくりをしています。
生き物の住まいには様々な形があります。巣を作るものもいれば、他の生き物を利用するもの、互いが協力するものもいます。生き物たちにとっては住んでいる環境そのものが住まいである生き物もいます。今回、生き物たちが住まう様子を、身近に感じていただけるように工夫を凝らしました。 どんな方に展示を
見ていただきたいですか?- 生き物が好きな人もそうでない人も この展示で“何か”を感じていただきたいと考えています。