大阪湾にアカウミガメが漂着しました

先日、海遊館に「砂浜にウミガメが漂着して衰弱しているので力を貸してほしい」との連絡がありました。

電話ではどのような状態かが分からなかったため、獣医を含めたメンバー数人で現地へ向かうことになりました。応急処置の道具一式と、連れ帰って保護する可能性も考慮して輸送の道具も積み込みました。

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現地に到着すると、地元の方々が車の入れる場所までウミガメを運んで来てくれていました。
早速確認したところ大型のアカウミガメのようで、想像していたよりもかなり衰弱していました。

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応急処置のみで自力で海に帰ることは不可能だと考え、連れて帰ることになりました。
乗ってきた車に積み込み、処置を開始します。
感染症などを引き起こしている可能性があるので抗生物質を投与します。
また、砂浜に打ち上げられていたためかかなりの脱水状態でしたので補液(点滴)を行いました。

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応急処置が済んだら海遊館に向けて出発です。

輸送中も呼吸はかなり弱々しいものでした。

海遊館に到着すると、本格的な処置の開始です。

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また脱水を起こさないように点滴も継続しながら、血液検査で状態を確認すると、血糖値が異常に高いことが分かりました。血糖値を下げる薬を投与して様子を見ます。

作業は夜遅くまで続きました。懸命の処置のおかげか呼吸も少しずつ落ち着いてきました。あとは回復を祈るばかりです。

しかし翌朝もあまり状態は良くありませんでした。

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獣医があの手この手でいろいろと対応しますが、昼頃には脈も弱くなってしまい、残念ながら昼過ぎに死亡が確認されました。
奇跡的な回復を祈っていましたが、今回は関わった全員にとって残念な結果となってしまいました。

それから死因などの原因究明のため海遊館スタッフで解剖も行いました。まだ正確な推定ができていませんが、かなりの老齢個体であったようです。
幸いなことに今回は胃内容物からはビニール袋などの人工物は出てきませんでした。さらに詳しい死因を突き止めるために現在専門機関の検査に出しているところです。

今回は雄の個体で、さらにアカウミガメの産卵シーズンは西日本では夏の間のみであることから、産卵などで砂浜にやってきたようでもないみたいです。
なぜ今回は大阪湾の砂浜に打ち上げられたのでしょうか。
私たち人間の生活は関係あったのでしょうか。

海遊館スタッフにとっても印象的な出来事となりました。

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