サメ・エイの血液検査

海遊館で暮らしているサメやエイたち、実は定期的に血液検査をしています。
「太平洋」水槽で暮らしているジンベエザメの「遊」と「海」は月に1回、エサの時間に水中で採血し、血液を詳しく調べて健康管理に役立てています。

先日は「モルディブ諸島」水槽で暮らしているサメやエイたちの血液検査を実施しました。
写真はトラフザメ(▼写真①)。

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サメの採血は尾から、エイの採血は胸ビレから行います。
採取した血液は、他の生き物たちと同じような項目の検査をしますが、血液性状が哺乳類とは大きく違うので検査にも工夫が必要です。
まず血液の中の赤血球や白血球の数え方。
哺乳類であれば、機械に血液を通せば自動で血球のカウントをしてくれます。
ですがサメやエイをはじめ、魚の赤血球には核があるので機械ではカウントできません。
血液を専用の液で希釈し、顕微鏡で確認しながら数えます。

その時に使うのが血球計算盤(▼写真②)。

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スライドガラスの上に小さなマスが刻まれていて、そのマスの中に何個血球があるかを数えることができるようになってます。(▼写真③④)

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貧血になっていないかな、感染症で白血球は上がっていないかな、などを確認します。
次に血液を遠心して、血球成分と液体成分に分離し、液体成分の生化学検査を実施します。
私たち人間の健康診断と同じ、血糖値や肝酵素値、中性脂肪の値なんかがこれにあたります。

ここでサメ、エイたちの検査ではもう一工夫。
サメ、エイたちは高塩分、高浸透圧の海水中で生活しています。
それに適応するために、ナトリウムやクロールなどの電解質は私たち人間の2倍の濃度。
それでも海水の塩分濃度には及ばないので、体内に尿素を蓄積して海水とほぼ同等の浸透圧を保っています。
なので、電解質や尿素窒素の計測をする際には、水で希釈して計測しないといけません。

はじめてサメの血液検査をしたときは、電解質や尿素窒素の値の高さにびっくりしました。
種類や個体によっても検査値に差が出てくるので、日々の血液検査はその個体の正常値データを蓄積するという意味合いもあるのです。
生き物たちの健康管理は、その生き物の特徴を理解して、いろいろと試行錯誤しながら行っています。


▼写真⑤はイヌザメ、サンゴトラザメ、トラフザメの血液

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