調査・研究
2024年07月25日
海遊館は、葛西臨海水族園(東京都江戸川区)と共同で取り組んでいるミナミイワトビペンギンの人工繁殖研究において、凍結精子を用いた人工授精に成功しました。本種での凍結精子を用いた人工授精は、2022年に両園館で達成した世界初成功に続き世界2例目、海遊館では初めての成功です。

凍結精子を用いた人工授精個体と判明したミナミイワトビペンギンの雛(写真中央:7月20日撮影)
雛は現在、海遊館「フォークランド諸島(マルビナス)」水槽で親鳥が子育てをしており、時折、雛に口移しで餌を与える等の様子をご覧いただけます。雛の成長は順調で、飼育員は毎朝の体重測定や観察で健康状態をチェックしながら、子育てを見守っています。
《親鳥》母:海遊館メス 父:葛西臨海水族園オス
《精子の処理》凍結保存
《人工授精の実施日》4月19日、 22日、24日
《産卵日》5月3日
《孵化日》6月4日
《DNA検査の結果》人工授精による雛と判明 ※世界2例目
海遊館では2011年より、野生下において絶滅の恐れがあり、日本国内での飼育個体数も減少傾向にある本種の繁殖生態の解明と人工繁殖技術の確立を目指した研究を開始しました。2016年からは葛西臨海水族園と連携し、同年に世界初となる液状保存の精子を用いた人工授精に成功しました。
2017年には両園館で共同研究契約を締結し、さらなる研究の発展を目指し精子の冷凍保存に取り組んできました。2022年に葛西臨海水族園で誕生した雛が凍結精子を用いた人工授精による個体と判明し、本種では世界で初めての成功となりました。
本年度は、葛西臨海水族園で飼育しているオスから精子を採取、凍結保存の処理後に輸送し海遊館のメスに対して人工授精を実施しました。
人工授精を実施したメスが産んだ卵が6月4日に孵化(2024年6月10日報道発表済)し、血液による親子判定を実施したところ、葛西臨海水族園のオスのDNAを確認し、凍結保存を用いた人工授精に成功したことが判明しました。
海遊館と葛西臨海水族園は協力関係をより深め、本種における人工授精の技術を確立させます。また、この技術を国内外の水族館や動物園に普及させることで、繁殖を推進し、絶滅のおそれがある野生下のミナミイワトビペンギンの種の保存にも貢献したいと考えています。

英名:Southern Rockhopper Penguin
学名:Eudyptes chrysocome
分類:ペンギン目 ペンギン科(IUCNレッドリスト:VU (絶滅危惧種)
分布 : フォークランド諸島(マルビナス)など南極周辺の島々
体長は成熟個体で45~58cm、体重は2.2~4.2kg。ペンギンのなかでも小型の種で、岩場を飛び跳ねながら移動することからこの名前がついたといわれています。目の上にある黄色い冠羽が特徴で、沿岸の岩場の小石や雑草で巣づくりをします。メスは1回の繁殖で通常2個の卵を産みます。ペンギンの中では気性がやや激しく、小魚やオキアミなどを食べます。
2025.11.20
ニュース
水中からメリークリスマス!「サンタダイバー」が登場します
2025.11.19
生きもの情報
飼育員が人工保育した絶滅危惧種の海鳥「エトピリカ」の展示決定!!
~12/1(月)より「アリューシャン列島」水槽にてご覧いただけます~ 2025年12月1日(月)に、同年4月9日よりリフレッシュ工事中の「アリューシャン列島」水槽が再オープンします。これに合わせ、バックヤードで飼育員が人工保育したエトピリカの幼鳥(1羽)がデビューします。今回デビューするエトピリカは、2025年8月25日にバックヤードで誕生しました。誕生直後から飼育員が親代わりとなり、エサやりや体重測定を行って育てています。10月20日からは飼育員が一緒にプールに入って遊泳訓練を重ね、成鳥と同じように泳げるようになりました。現在は水鳥らしい姿になってきましたが、成鳥に比べてクチバシが小さく黒ずんだ色をしており、まだまだ幼くあどけない姿をご覧いただけます。▼飼育員による遊泳訓練の様子 【エトピリカの幼鳥について】 ・産卵日 : 2025年7月18日(金)・孵化日 : 2025年8月25日(月)・性 別 : 不明・体 重 : 54g(孵化直後)→ 610g(2025年11月19日時点)※生きものの状況により予告なく展示を中止する場合がございます。 エトピリカの担当飼育員からのコメント まずは「アリューシャン列島」水槽という新しい環境に早く慣れてほしいです。またバックヤードでしっかり遊泳訓練しましたが、まだまだぎこちない泳ぎ方でとても愛らしいので、たくさんのお客様に幼鳥の間だけの魅力をご覧いただきたいです。 【エトピリカについて】 英名 : Tufted puffin学名 : Fratercula cirrhata北太平洋の亜寒帯域に広く生息する海鳥で、現在、日本国内では北海道の一部地域でのみ繁殖が確認されているものの、その数は少なく、環境省レッドリストにて絶滅危惧IA類に分類されている。
2025.10.31
調査・研究
ジンベエザメの身体測定を実施しました
11月1日(土)の "計量記念日" を前に、10月31日(金)に「太平洋」水槽で飼育展示中のジンベエザメの全長・胴回りの計測を行いました。 結果は以下のとおりです。 全長 胴回り 推定体重 推定年齢 海(かい)/オス 5 m 30 cm昨年(4 m 70 cm) 2 m 60 cm昨年(2 m 30 cm) 1,100 kg昨年( 700 kg) 8~9 歳 遊(ゆう)/メス 6 m 20 cm昨年(6 m 20 cm) 2 m 70 cm昨年(2 m 60 cm) 1,800 kg昨年(1,800 kg) 18~19 歳 「海」は、昨年 10 月 2 日の搬入時に比べ、全長で 60 cm、推定体重で 400 kgも大きくなりました。「遊」は全長には変化ないものの、胴回りが 10 cm 大きくなっています。全長から体重を推定しているため、昨年と同じ推定体重になりますが、増加している可能性が高いと推察されます。 海遊館では、まだ詳しい生態がわかっていないジンベエザメの生態研究や健康管理の一環として、定期的に身体測定を行っています。飼育員が水槽に潜ってエサを食べている最中のジンベエザメにメジャーを当て、全長と胴回りを実測し、推定体重を割り出しました。 計量記念日を通して生きものたちが元気に成長する様子を紹介し、海遊館の健康管理の取り組みや、自然環境について興味をもっていただきたいと考えています。