生きもの情報
2023年05月17日
2023年5月16日(火)に妊娠中のイトマキエイ(2022年12月12日報道発表済み)が出産しましたが、赤ちゃんは誕生後に死亡しました。病理解剖と血液検査の結果から、遊泳が上手くできず体力を消耗し、血液のバランスが崩れたことが原因と考えています。
「太平洋」水槽で飼育しているメス(以下「母親」)の妊娠が判明してから、定期的な超音波検査により 胎仔の成長を確認し、母親の腹部の膨らみや行動の変化を記録していました。また、誕生後の赤ちゃんの保護を目的に、水槽内に仕切り網を設置して出産に備えていました。
5月16日の朝8時30分、飼育員が「太平洋」水槽の観察時に赤ちゃんを確認しました。赤ちゃんの遊泳が不安定であったため、ダイバーがサポートしながら見守っていましたが、12時頃から遊泳が弱くなる等の不調が見られました。飼育員と獣医が赤ちゃんを取り上げ、ケアに努めましたが、16時18分に死亡しました。
なお、母親は出産後の経過観察のため、引き続き「太平洋」水槽の仕切り網内で飼育いたします。
(6月2日に仕切り網を撤去いたしました。)
今回、海遊館では世界で初めて飼育下におけるイトマキエイの妊娠から出産に至る知見を得ることができました。この知識と経験を最大限に活かし、イトマキエイの繁殖と保全に役立てていきたいと考えています。
■出生日 : 2023年5月16日(火)早朝
■性 別 : オス
■体盤幅 : 1.03m ※体盤幅...両胸びれ間の長さ
■母 親 : 体盤幅2.04m、2015年から海遊館で飼育
英名Spinetail devilray
学名:Mobula mobula
南日本から東シナ海、南シナ海、ハワイにかけて分布する大型のエイで、頭部にある一対の頭鰭(あたまびれ)が特徴。体盤幅約3m。オニイトマキエイやナンヨウマンタに姿が似るが、口の位置や幅の違いにより見分けられる。漁獲による生息数の減少が示唆されており、IUCN (国際自然保護連合)のレッドリストでは「危機(EN)」に指定されている絶滅危惧種。外洋域に生息することや飼育例の少なさから研究が進んでおらず、生態に謎が多い。
2025.06.12
調査・研究
ミナミイワトビペンギンの人工繁殖研究が、 日本動物園水族館協会最高の賞「古賀賞」を受賞しました
葛西臨海水族園と共同で取り組んでいるミナミイワトビペンギンの人工繁殖研究が、両園館が加盟する日本動物園水族館協会(JAZA)の最高の賞である「古賀賞」を受賞し、2025年5月22日(木)に開催された同協会の総会にて表彰されました。海遊館では2011年より、野生下において絶滅の恐れがあり、また、日本国内での飼育個体数も減少傾向にある本種の繁殖生態の解明と人工繁殖技術の確立を目指した研究を開始しました。2016年からは葛西臨海水族園と連携し、同年に本種では世界初となる液状保存精液を用いた人工授精に成功しました。 2017年には両園館で共同研究契約を締結し、さらなる研究の発展を目指して冷凍保存精液による人工繁殖に着手しました。2022年に葛西臨海水族園で誕生した雛が冷凍保存精液を用いた人工授精による個体と判明し、本種では世界初となる繁殖成功、さらに2024年には、海遊館で誕生した雛が世界2例目の成功を収めました。 日本動物園水族館協会(JAZA)総会の授賞式の様子(豊橋総合動植物公園提供) この度、14年にわたる研究の実績が認められ、日本動物園水族館協会より「古賀賞」を受賞しました。古賀賞は、希少動物(繁殖が難しく、世界的にも重要な種)の繁殖にとくに功績のあった動物園や水族館に対して贈られる、日本動物園水族館協会の最高の賞です。1986年の制定以降、これまでに37件の授与があり、本件が38件目となります。 海遊館と葛西臨海水族園は、本研究で培った技術を用いて、館内繁殖による国内のミナミイワトビペンギンの継続飼育や、将来的には野生下のペンギン類保全へ貢献できればと考えています。研究の発展のため、これからも取り組みを続けてまいります。 人工繫殖研究について詳細はこちら 2024年に海遊館で誕生した冷凍保存精液による人工授精で誕生した雛 人工授精の様子
2025.06.11
生きもの情報
ミナミイワトビペンギンの雛が2羽誕生しました
展示水槽で子育ての様子をご覧いただけます。 2025年5月29日(木)、6月7日(土)に、「フォークランド諸島(マルビナス)」水槽でミナミイワトビペンギンの雛が2羽誕生しました。「フォークランド諸島(マルビナス)」水槽で飼育しているミナミイワトビペンギンたちは、4 月下旬より繁殖期を迎え、複数形成されたペアから2ペアで1羽ずつ、計2羽の雛が誕生しました。 現在は、親鳥がそれぞれの巣で子育てをしており、時折、雛に口移しで餌を与える等の様子をご覧いただけます。 雛たちの成長は順調で、1羽目の雛は孵化から約2週間で体重が10倍以上になりました。2羽目の雛も孵化してから4日で2.5倍を超え、すくすく育っています。飼育員は毎朝の体重測定や観察で健康状態をチェックしながら、子育てを見守っています。 ミナミイワトビペンギンの親子(6月11日撮影) 【ミナミイワトビペンギンの雛について】 【1羽目】・孵化日 : 2025年5月29日(木)・性 別 : 不明・体 重 : 75.3g(孵化直後)752.1g(6月11日時点) 【2羽目】・孵化日 : 2025年6月7日(土)・性 別 : 不明・体 重 : 64.1g(孵化直後)150.0g(6月11日時点)
2025.06.04
調査・研究
海遊館クラウドファンディングについてのご報告
海遊館では1990年の開業当初より、オーストラリア北東部に広がる世界最大のサンゴ礁であるグレート・バリア・リーフを再現した「グレート・バリア・リーフ」水槽の展示を通して、その自然環境やそこで暮らす生きものの生態を伝えてきました。昨年11月28日にリニューアルオープンした同水槽の、リニューアルに向けた現地潜水調査などを経て、改めてグレート・バリア・リーフの美しさ、生命の素晴らしさをより多くの方に知っていただきたい、という想いが強くなり、グレート・バリア・リーフやサンゴ礁の未来を守る取り組みとして、2024年6月3日から2024年7月31日まで、クラウドファンディングを実施し、約546万円のご支援をいただくことができました。改めてクラウドファンディングで支援者の皆さまの想いとその温もりを感じました。心より厚くお礼申し上げます。皆さまからのご支援金は、海遊館からの拠出金と合わせて1,000万円をグレート・バリア・リーフの環境保全に向けて活動する現地NPO団体「Great Barrier Reef Legacy」に寄付させていただきました。また、海遊館でも昨年より「サンゴのバイオバンク」を設置し、サンゴの飼育・研究に取り組んでおります。今後とも皆さまの温かいご支援を、どうぞよろしくお願いいたします