突然水槽に現れた生物とは?

海遊館では、定期的に目の前の天保山岸壁で生物調査を行っています。この時、種類がわからなかったり、成長や行動を調べたい場合などは小型水槽に収容して飼育しています。

先日、この水槽の中にふわふわ漂っている生物を多数発見しました。こんな生き物は入れた覚えがありません。すくって調べてみると、ミズクラゲの「エフィラ」と呼ばれる成長段階のものであることがわかりました(写真1)。エフィラは大きさ数ミリほどで、8本の腕のようなものが伸びています。この後、エフィラは少しづつ成長しながら腕と腕の間のくぼみが狭くなり、やがて直径1cmを超えるおわん状の傘を持つ赤ちゃんクラゲになります。

▼写真1
osakabay_mizukurage_1.jpg

では、そもそもエフィラはどこからきたのでしょうか?この謎はすぐ解けました。水槽の中に入っていた海藻(ジュズモの仲間)を顕微鏡で拡大してみると、写真2のようなものが多数付いていたのです。

①のイソギンチャクのようなものは、ミズクラゲの「ポリプ」です。(ミズクラゲは生まれてしばらくは、ポリプという形で物にくっつく生活をします!)やがてポリプの体にくびれができ、数枚のお皿を重ねたような形の「ストロビラ」(写真2の②)になり、次にお皿が1枚ずつ離れて水中に泳ぎだしたのが写真1のエフィラなのです。

▼写真2
osakabay_mizukurage2_2.jpg

どうやら、天保山岸壁で採れた生物を水槽入れた時、一緒に入れた海藻やロープ片などにポリプがくっついていたというのが真相のようです。
大阪湾では1月の寒い季節にはあまりクラゲの姿をみかけませんが、ミズクラゲに関しては、海底でポリプの姿でじっと暮らしているようです。やがて冬の間にエフィラとして水中に泳ぎ出し、春にプランクトンをもりもり食べて成長した赤ちゃんクラゲは、初夏に私たちのよく目にする大きさのミズクラゲへと成長するのです。


大阪湾のクラゲについての話題は、このシリーズの「クラゲで季節を感じる」「クラゲの大発生」もご覧下さい。

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