採血完成に向けて

私たち飼育員は、動物たちが心身ともに健康でいる為に日々様々な仕事をしています。
動物たちに与える餌を準備する時はよく目を凝らしてキレイな餌を選別したり、餌を与える時間には動物をしっかり見て異常がないか確認したり、水質が悪くならないように掃除をしたりします。これが飼育員の仕事の基本的な調餌、給餌、掃除の【3じ】と言われるものです。

【3じ】はすべて重要ですが、その中の動物に直接触れ、健康管理に役立てられるのが給餌です。
給餌の時間には、体重測定や体温測定、採血など健康診断がスムーズにできるように、動物に協力してもらいながらトレーニングを行っています。

動物たちも一頭一頭個性があり、得意なことや苦手なことがあります。苦手なことは日々のトレーニングを通して克服していきます。しかし、ゴマフアザラシの「ナナ」はどうしても採血が苦手で、色々な方法を試みましたが上手くいきません。健康管理において採血は行っておきたいひとつで、ナナの健康の為にも諦めたくありません。

私たち飼育係員の知識や技術向上のためトレーニングセミナーを受講し、本からは学べない実践的なお話や、動物と関わる上で心に留めておくべき考え方など沢山の学びがありました。その中でナナの採血が出来るように挑戦してみることになりました。

動物は言葉が話せないため、何が大丈夫で何が嫌なのかを動物のちょっとした動きで気づくことが大切ですが、セミナーの学びの一つとして、動物がYESとNOをはっきりと示せる状況を作り出し、動物自身が我慢をすることが減ればリラックスして、前向きにトレーニングに取り組めるというものです。

ナナの採血完成に向けてまず始めた事は、ナナのYESとNOを組み取ってあげる事です。YESとNOを示す方法の一つとして、「チンレスト」があります。チンレストとは基本的に犬のトレーニングで用いられ、チンとは顎、レストは休むという意味で、犬が自発的に台の上に顎を乗せて静かに休む姿勢を取ってくれればブラッシングや足拭き、爪切りなどを安全にストレスフリーで行うことが出来るようになるものです。

チンレストの方法を使ってチンレスト台をアザラシ用に新たに作製し、ナナとトレーニングを始めました。2404_nana_02.jpg

このチンレストでなぜナナのYESとNOを組み取ることに繋がるのか疑問に思いますよね。原理としては図の通りです。
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動物たちが飼育員の動きをコントロールすることによって我慢をしなくて良くなり、私たちも言葉が話せない動物たちのYESとNOを理解できます。

ナナがこの台に顎を置く=YES
台から顎を外す=NO
を念頭におきトレーニングしています。

今はナナにたくさんの刺激(音や動き)に慣れてもらう事から行い、徐々に触りながら採血完成に向けてレベルを少しずつ上げていこうと奮闘中です。



道のりはまだまだ遠いですが、進捗があればまたブログで報告できればと思います。
チンレスト台を使ってトレーニングしている所を見かけたらぜひ応援をお願いします。

このように海獣チームでは動物福祉の考えの下、様々な情報を吸収することにより、飼育員全員で動物にとってより良い環境を作れるよう日々行動しています。

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