調査レポート
スナメリは日本の他、中国や朝鮮半島の沿岸域にも生息しているイルカの仲間。
IUCN(国際自然保護連合)のレッドリストでは「危機(EN)」に指定されている絶滅危惧種です。
実は大阪湾にもスナメリが生息しています。
都市開発などの環境変化により昔と比べて数が少なくなったと言われますが、調査記録が少なく、はっきりとしたことは分かっていません。
海遊館は、地元大阪湾に暮らすスナメリを守るための第一歩として、スナメリのことをたくさんの人に知っていただきたいという想いから、2010年よりスナメリの調査活動を行っています。
\ 情報を求めています /
大阪湾でスナメリを見かけられた方はぜひ海遊館へご一報ください!
体長2m程度の小型のイルカの仲間です。
灰色の体色と、背ビレを持たず、首から背中にかけてゴマ粒のようなイボが並んでいることが特徴です。このイボを仲間同士でこすり合わせ、コミュニケーションをとっているのではという説があります。
エサは小型の魚やイカ、タコ等の頭足類です。エコロケーション(超音波)を使って、泥の中に隠れる獲物も探し出すことができます。日本のスナメリは遺伝子の違いで5つのグループに分けられていて、大阪湾のスナメリは「瀬戸内海系群」に属します。
スナメリは実は見つけるのがとても難しい生きもの。他のイルカの仲間と違って背びれがなくてジャンプしない、灰色の体色が白波に似ていて間違えやすいなど、見つけるのが難しい条件が揃っているのですね。
そんなスナメリを探すコツ(?)はひたすら海を眺め続けること!呼吸のために水面に出てくる瞬間を狙ってその姿を探し続けます。忍耐力の勝負になりますが、時には休憩して目をスッキリさせつつ、さがしてみてくださいね♪
海遊館では、生きものを飼育するための海水を、和歌山県日御碕沖から船で運んでいます。
海水運搬船の通り道である関西国際空港の北西側は、スナメリがよく目撃されている海域。
通過する際にスナメリを見かけたら、日時や天候、スナメリの頭数、どんな様子だったかなどを記録しています。
関西国際空港の周辺は禁漁区になっており、様々な生きものが暮らしています。そういった生きものを食べにやってくるのか、スナメリの目撃情報が多い海域でもあります。
春~秋にかけて遊漁船からの目視調査を行っていますが、調査は「目」が多ければ多いほど精度が増します。「大阪湾生きもの一斉調査(大阪湾環境再生連絡会主催)」の一環で大阪ECO動物海洋専門学校と合同調査を行ったり、時には参加者を募ってお客様と調査をすることもあります。
「A-tag」とは、海中の音を使って生きものの存在を確認できる調査機器のことです。海の上からの調査は海況に左右されやすいデメリットがあるので、海中からもスナメリの生息状況を調べています。
飼育員が毎日海に出て調査することは難しいため、漁師さんやヨットを持つ方など、日々海に出る方々にもご協力いただき、スナメリの目撃情報を集めています。そのおかげで、とても貴重な情報が蓄積されています。
生きものが浜に打ち上げられたり、岩場で座礁したり、漁網などにかかることを「ストランディング」といいます。生きている場合は海に戻したり、水族館が保護するケースがありますが、死んでいる場合でも、死体を詳細に調べることで野生動物の保護につながる貴重な情報を得られることがあります。
発見のご連絡をいただくと、飼育員が現地へ向かい、死体を持ち帰ってCTスキャンや体組織のサンプリングなどを行います。死因や何を食べていたのか、どのような成長段階にあったのかを調べることで、そのスナメリが生きてきた環境を知ることができます。
スナメリは水産保護法により、保護の目的であっても勝手に捕まえたり、移動させたり、死体を持ち帰ることができません。海遊館では、必ず関係省庁へ連絡してから対応しています。
海遊館では、大阪湾のスナメリを調べています。もしスナメリを見かけたら、生きていても死んでいても、ぜひ海遊館へご一報をお願いいたします。
連絡先:海遊館海獣環境展示チーム TEL:06-6576-5545
「スナメリを見かけたので連絡しました」とお伝えください。
飼育員から、こんなことをお聞きします。
① どこで見かけましたか?(できるだけ詳しく)
② 今、どんな状態ですか?
③ 何頭いましたか?