調査・研究
2022年07月05日
海遊館と葛西臨海水族園(東京都)は、共同でミナミイワトビペンギンの人工授精に取り組み、本種では世界初となる凍結した精子を用いた人工授精に成功しました。
海遊館では平成23年より、野生下において絶滅の恐れがある本種の繁殖生態の解明と人工繁殖技術の確立を目指した研究を開始しました。平成28年からは葛西臨海水族園と連携し、同年に世界初となる液状保存の精子を用いた人工繁殖に成功しました。
平成29年には両園館で共同研究契約を締結し、取り組みをさらに発展させるべく、精子の冷凍保存への研究を開始しました。
昨年度に海遊館で飼育しているミナミイワトビペンギンから精子を採取、凍結保存の処理後に輸送し葛西臨海水族園の1羽のメスに対して人工授精を実施しました。
人工授精を実施した1羽のメスは、4月4日、8日に計2つの卵を産み、5月8日に1羽のヒナが誕生しました。血液を用いたDNA検査の結果、凍結保存の精子を用いた人工授精によるヒナであることが判明しました。
なお、孵化したヒナは、残念ながら5月10日に死亡しました。
親鳥 | 母:葛西臨海水族園メス 父:海遊館オス |
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精子の処理 | 凍結保存 ※世界初 |
人工授精の実施日 | 3月28、31日 |
産卵日 | 4月4日 |
孵化日 | 5月8日 |
DNA検査の結果 | 人工授精によるヒナと判明 |
海遊館と葛西臨海水族園は協力関係をより深め、本種における人工授精の技術を確立させます。また、この技術を国内外の水族館や動物園に普及させることで、繁殖を推進し、絶滅のおそれがある野生下のミナミイワトビペンギンの種の保存にも貢献したいと考えています。
英名:Eudyptes chrysocome
学名:Southern Rockhopper Penguin
体長は成熟個体で45〜58cm、体重は2.2〜4.2kg。ペンギンのなかでも小型の種で、岩場を飛び跳ねながら移動することからこの名前がついたといわれています。目の上にある黄色い冠羽が特徴で、沿岸の岩場の小石や雑草で巣づくりをします。メスは1回の繁殖で通常2個の卵を産みます。ペンギンの中では気性がやや激しく、小魚やオキアミなどを食べます。
2025.06.04
調査・研究
海遊館クラウドファンディングについてのご報告
海遊館では1990年の開業当初より、オーストラリア北東部に広がる世界最大のサンゴ礁であるグレート・バリア・リーフを再現した「グレート・バリア・リーフ」水槽の展示を通して、その自然環境やそこで暮らす生きものの生態を伝えてきました。昨年11月28日にリニューアルオープンした同水槽の、リニューアルに向けた現地潜水調査などを経て、改めてグレート・バリア・リーフの美しさ、生命の素晴らしさをより多くの方に知っていただきたい、という想いが強くなり、グレート・バリア・リーフやサンゴ礁の未来を守る取り組みとして、2024年6月3日から2024年7月31日まで、クラウドファンディングを実施し、約546万円のご支援をいただくことができました。改めてクラウドファンディングで支援者の皆さまの想いとその温もりを感じました。心より厚くお礼申し上げます。皆さまからのご支援金は、海遊館からの拠出金と合わせて1,000万円をグレート・バリア・リーフの環境保全に向けて活動する現地NPO団体「Great Barrier Reef Legacy」に寄付させていただきました。また、海遊館でも昨年より「サンゴのバイオバンク」を設置し、サンゴの飼育・研究に取り組んでおります。今後とも皆さまの温かいご支援を、どうぞよろしくお願いいたします
2025.05.29
生きもの情報
海遊館初!大型のサメ「シロワニ」の展示を開始しました
海遊館は、「シロワニ」の展示を開始しました。本種の展示は海遊館初です。 左:オス 右:メス シロワニは、全長4mを超える大型のサメの仲間です。大きな歯がむき出しの恐ろしい顔つきとは裏腹におとなしい性格で、サンゴ礁や沖合の浅瀬、水中の洞窟などに生息しています。東海大学海洋科学博物館より、全長2.7mのメスと2.5mのオス、計2尾を「太平洋」水槽へ搬入しました。現在は新しい環境にも慣れ、水槽の中をゆったりと泳いだり、1日2回の「お食事タイム」では飼育員が与える餌を食べる様子をご覧いただけます。 展示場所 「太平洋」水槽 展示個体 ・メス:全長2.7m 2025年5月12日(月)搬入・オス:全長2.5m 2025年5月15日(木)搬入 シロワニについて 英名:Sand tiger Shark学名:Carcharias taurus 全長4mを超える大型のサメ。サンゴ礁や沖合の浅瀬など暖かい海に生息し、日本では伊豆七島や小笠原諸島を含む南日本海域に分布する。日中は海底の洞窟などに潜み、夜間に活動する夜行性で、他の魚類を主な餌とする。恐ろしい顔つきとは裏腹に、性格はおとなしい。胎生で、子宮を2つ持ち、1度の繁殖で全長約1mの仔を最大2尾産出する。胎児は子宮内の他の卵や兄弟姉妹を食べて成長することで知られる。
2025.04.24
生きもの情報
※展示終了しました【海遊館初展示】タカアシガニの「メガロパ幼生」の展示をしています
※展示終了しました「日本海溝」水槽で孵化したタカアシガニの幼生を4/23より、エントランスビル4F、飼育員カウンターにて期間限定で展示しています。 2025年3月7日(金)に、「日本海溝」水槽でタカアシガニの赤ちゃんが生まれているのを飼育員が発見し、バックヤードにて大切に飼育していました。タカアシガニの赤ちゃんは誕生直後は「ゾエア幼生」と呼ばれ、大人とは異なる姿をしています。脱皮を繰り返しながら「メガロパ幼生」を経て、大人と同じ姿の「稚ガニ」に成長します。この度、メガロパ幼生(約3mm)まで成長しましたので、世界最大のカニ「タカアシガニ」の今しか見られない貴重な姿をぜひご覧ください。また、タカアシガニの幼生の成長の様子はブログ「海遊館の舞台ウラ」でも紹介しています。 期 間 2025/04/23~ 場 所 海遊館エントランスビル4F 飼育員カウンター 種 類 タカアシガニのメガロパ幼生(大きさ約3㎜) 5匹程度 ※生き物の状況によっては急遽展示を中止する場合がございます。 タカアシガニ 英名:Japanese giant spider crab学名:Macrocheira kaempferi オスは鋏脚を広げると3m以上にもなる、世界最大のカニ。より大きな分類群である節足動物としても世界最大の種で、主に日本近海に分布するが、台湾などでも漁獲例がある。普段は深海域で生活し、春になると産卵のために浅海域へ移動することが知られている。