モクズガニ

私が調査でよく訪れる大阪湾南部の男里川河口では、4月ごろになると繁殖を終えて死んだモクズガニをよく見かけます(写真1)。モクズガニは、川の上~下流域で生活するカニですが、繁殖期には川を下り、河口周辺の海岸までやってきてオスとメスが交尾をします(写真2)。やがてメスは産卵し、卵をお腹にある肢(あし)に付け、ふ化するまで守ります。親は、ふ化した幼生を海に放つと川にもどることなく死んでしまい、幼生は数~十数週間 海でプランクトン生活をしたあと稚ガニになって川を上ります。

 男里川のモクズガニは、3月に交尾の観察例があり、4月に親の死体をよく見かけることから、冬に海まで下り、春ごろをピークに産卵し、初夏に稚ガニが川を上るのではないかと想像しています。

 海岸で見かけるモクズガニの死体は、肢がちぎれフサフサだったハサミの毛も抜けてまばらになったものがほとんどです。このような親の姿を見た時、よくやったとほめたい気持と、繰り返す命の不思議さを感じてしまいます。

【 写真1:海岸に打ち上がったモクズガニの死体】
 左がオス。ほとんどの肢がとれてしまっている。
 右がメス。オスと比べ、卵を抱くため腹部が広い。

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【 写真2:交尾中のモクズガニ】
手前の個体がオス、奥がメス。お互いに向き合い、腹部を合わせて交尾が行われる。

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