真夏の珍客

8月のある日、海遊館前の天保山岸壁で、流れ藻がロープに絡まっているのを見つけました。
これを採集して調べると、ガザミなどの生き物が見つかりました(写真1)。

見つかったガザミは6個体で、甲幅が14~23mm程の稚ガニ(写真2)でした。ふ化したガザミの幼生は、水中を2~3週間浮遊した後、稚ガニに変態して浅い海の砂場で暮らすようになります。しかし、一部の稚ガニは流れ藻に乗り移り、一定期間浮遊生活を続けることが知られています。今回見つかったガザミの子供たちも、そのような旅の途中にあったようです。流れ藻に付く利点として、餌となる小動物が海藻にたくさんついている事があげられます(写真1)。また、流れ藻の中に隠れて身を守り、すみやすい場所にたどり着けるチャンスも増えるかもしれません。ガザミの子供たちは、生き残れば来年の秋には甲幅20㎝ほどに成長しているはずです。何とか幸運に恵まれるよう祈りながら、もとの流れ藻に戻しました。
流れ藻には他に、ニジギンポ、イソスジエビ(写真3)も見つかりました。ガザミも含め、天保山岸壁では3種とも初めての記録です。特にイソスジエビは大阪湾内ではあまり多くなく、外海に面した磯などで見つかります。

夏には、天保山のような湾の奥にも流れ藻に乗ってこの様な珍客が現れることがあるのです。



【写真1】 採集した流れ藻
流れ藻は、ロープに絡まった状態で見つかった(左上)。海藻の種類は、ホンダワラ類。円の中にガザミがいる。海藻にはフジツボ類やヒドロ虫類、ヨコエビ類など、ガザミの餌となる小動物が多くついていた。


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【写真2】見つかったガザミの子供(稚ガニ)
甲幅22㎜ほど。普通、この頃の稚ガニは岸に近い砂底で生活し、次第に沖の砂泥底に移動する。甲幅20㎝ほどに成長し、大阪湾では秋頃に多く漁獲される。

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【写真3】 ニジギンポ(左)とイソスジエビ(右)

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