思いをリレー
- 2022.07.13
2007年から15年間、海遊館の館長を務めてきました西田です。
先月末、村上寛之新館長に職務を引き継ぎましたので、この場をお借りして少しだけご挨拶させて頂きます。
私は海遊館がオープン(1990年)する1年4か月前から新米飼育員として働き始め、沖縄からのジンベエザメの長距離輸送、海遊館の博物館相当施設申請、高知県土佐清水市の海洋生物研究所以布利センター開設、吹田の万博跡地にニフレル開業など、様々な経験を積み、一昨年には開館30周年を迎えることもできました。
もちろん、成功ばかりではなく、自然界から預かってきた貴重な命を失う悔しい体験も多く、直近ではオープン以来初めてとなるコロナ禍による長期休業も経験しましたが、 こうして振り返ると、上手く行ったことより失敗したことに育てられてきたと、心から感じています。
これから新たな時代に向かって海遊館やニフレルも歩き出す時ですが、私たちが社会から求められている、生物多様性を守り、SDG'Sを達成し、動物福祉(アニマルウェルフェア)を実践するためにも、基本となる「命の素晴らしさと、命を守ることの大切さ」をこれからも伝え続けたいと思います。
最後に、この文章のタイトルを「思いをリレー」とした理由をご紹介します。
私はあまり文学的素養を持ち合わせていませんが、とても好きな詩が一つあり、その内容が今の心境にぴったりなので参考にさせて頂きました。その詩とは谷川俊太郎さんの「朝のリレー」です。
「朝のリレー」 谷川俊太郎 ポケット詩集III 田中和雄 編 2004年(株)童話屋
カムチャッカの若者が
きりんの夢を見ているとき
メキシコの娘は
朝もやの中でバスを待っている
ニューヨークの少女が
ほほえみながら寝がえりをうつとき
ローマの少年は
柱頭を染める朝日にウインクする
この地球では
いつもどこかで朝がはじまっている
ぼくらは朝をリレーするのだ
経度から経度へと
そうしていわば交替で地球を守る
眠る前のひとときに耳をすますと
どこか遠くで目覚時計のベルが鳴ってる
それはあなたの送った朝を
誰かがしっかりと受けとめた証拠なのだ
もちろん、引き続き私も努力を続けますが、「交替で地球を守る」、この「思い」を海遊館の村上新館長やニフレルの小畑館長、長年一緒に働いてきたすべての同僚の皆さんにしっかりと「リレー」したいと考えています。
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