タテスジトラザメの研究を紹介します!

現在、海遊館のバックヤードでは「タテスジトラザメ」を飼育しています。このサメは背中側のタテスジ模様が特徴的で、その見た目から英名ではストライプドキャットシャーク(Striped catshark)やパジャマシャーク(Pyjama shark)と呼ばれています。

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▲タテスジトラザメの成体の写真


タテスジトラザメは南アフリカ近海のみに生息する固有種で、野生下では海藻の隙間に隠れて、近づいてきたイカを捕食するなど、ユニークな生態のサメです。野生下では今のところ絶滅の危機は低いとされています。
しかし、本種の生態についての謎はまだまだ多く、生まれてから繁殖するまでの年齢や大きさなどはちゃんとわかっていませんでした。

海遊館では2005年にタテスジトラザメを搬入し、特別展示などでお客様にご覧いただき、生態や見た目の不思議さなどをお伝えしてきました。
その後、バックヤードで大切に飼育している中、繁殖に成功しました。
本種は卵生で、卵の両端にはツルが備わっており、水槽内では、配管や障害物などに巻き付けるようにして産み付けます。卵の殻の中には卵黄があり、受精していれば赤ちゃんが育って殻から出てきます。

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▲タテスジトラザメの卵


そこで、生態解明に向け、卵の孵化までの日数や幼魚の成長(長さと体重)を約6ヶ月記録し、機関紙かいゆうVo.12(2007年)で報告しました。ご興味がございましたらHPに掲載しておりますので、ぜひご覧ください。

機関誌「かいゆう」2007年3月【vol.12】

その後も3世代に渡り繁殖し、現在も成長記録を取り続けています。その期間はなんと18年間!担当者も2回変わりました!

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▲計測の様子(幼魚)
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▲計測の様子(成魚)


先述の「機関紙かいゆう」で報告した内容と、その後の長期間に渡る記録を精査したところ、非常に良いデータがとれたと思われました。そこで、南アフリカで野生のタテスジトラザメの成長を研究しているサメ研究者と連絡を取り、海遊館の記録と合わせて、論文として報告しました。
こちらは英語ですが要約のみ無料で閲覧可能です。

A comparison of the growth and development of pyjama sharks (Poroderma africanum) in wild and captive populations - Kiyatake - Journal of Fish Biology - Wiley Online Library

簡単に翻訳すると
・海遊館で飼育しているタテスジトラザメの卵の孵化までの期間は約239日
・産まれた時の幼魚の長さは約14cm、体重は17g
・産まれた幼魚27尾の内、オスよりもメスの方が3.5倍多い
・メスは産まれてから6.6年で成熟し、成熟時のメスの長さは83cm、体重は3.3kg
・野生のタテスジトラザメよりも海遊館のタテスジトラザメのほうが成長が速い。
・オスとメスでは、オスの成長が速い!

などなど

これらの情報は本種が絶滅危機に瀕した際に役立つだけでなく、本種に近いサメの仲間に対しても非常に重要な情報となります。
海遊館は他の種類の生物でも同じような調査や研究を行っています。飼育の現場から野生の生物に還元できるような調査、研究をこれからも行い、皆様にお知らせしていきたいと思います!

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