獣医 feat. トレーナー

今回は、水族館の生物のお医者さんの仕事について、ちょっとアカデミックに。

海遊館で暮している生き物たちのほとんどは水棲生物です。この水棲生物、病気になると、治療するのが、すっっっっごく大変なんです。
どれくらい難しいかと言いますとですね、
1. 水に暮している生物は陸上に上げられることに慣れていない。
魚は、陸に上げられると、もちろん呼吸ができないですよね。あとイルカさんなんかは、皮膚が乾燥すると火傷みたいな症状を起こしたり、自重で呼吸しにくくなったり。
2. 海棲哺乳類なんかは、Diving reflexのため、麻酔管理が難しい。
Diving reflexとは、長く水中で泳ぐために発達したものでして、少ない酸素を大事な器官(心臓とか脳)に優先的に送るための生理反応です。これが麻酔中は悪い方向に働いてしまい、呼吸が停止したり、心拍数が下がったりします。
3. 防水使用の医療機器はほとんどない。
レントゲンとかエコーとか生体情報モニター(ドラマで心臓が止まって"ピー!"って鳴って、「先生!心臓止まりました!」てやつ)などなど、医療器機ってほとんど防水機能がないので、検査処置中に水がかかって壊れると、「はい、自腹ね」って言われてしまいます・・・

などなど色んな理由で、水族館の生き物の健康管理は、病気にさせない、つまり"予防第一"なんですね。
しかし、予防のための健康管理をする生き物たちは、もちろん元気な訳で、検査しようとも大暴れして、そうそう簡単には事が進みません。
そこで、水族館で大切なのが、"ハズバンダリートレーニング"なのです。
"ハズバンダリートレーニング"とは、簡単に言いますと、健康管理のためのトレーニングです。例えばイルカさんに「採血しますよー」ってサインを出すと、尾鰭をトレーナーに向けてくれて、尾鰭から採血している間もおとなしく待ってくれるんですね。

海遊館では海獣類以外にも魚にも"ハズバンダリートレーニング"をしています。
それでは、先日、トラフザメさんでやった検査を紹介しましょう。

このトラフザメさん、体重30㎏もあるので、捕まえて保定するのが大変。なんで、担当トレーナーが、採血、エコー、内視鏡検査なんかを受けるトレーニングをしています。
ある時、トレーニング中にエコー検査をしたら、「ん?肝臓に何か液体みたいなのが・・・」
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その形はグニャグニャと長く蛇行しており、エコーで血管ではないことは分かりました。
サメも種類により臓器の構造は全く違うので、胆嚢かな?とも思ったのですが、どうも調べなくては気が済まない訳で、麻酔下で検査することになりました。
麻酔の方法は、「採血しますよー」とトラフザメさんをひっくり返します。
で、尾の付け根に針を刺して、血管の中に麻酔液を注入します。もちろんトレーニングされているので、この間ずっと、おとなしくしてくれています。
20130410_2.JPG
しばらくすると麻酔がかかり、呼吸が停止するので、口の中に新鮮な海水を流して人工呼吸開始。
20130410_3.JPG
もう痛みも感じないので、肝臓の中にある液体が溜まったところに向けて、ぶっとい針を挿入。
結果、緑色の液体が上ってきました。胆嚢だったわけですね。
20130410_4.JPG
とりあえず、よかった、よかった、と言うことで、トラフザメさんを覚醒させて、その日の検査は終了しました。

こんな感じで、海遊館ではトレーナーさんの協力のおかげで、獣医の仕事が出来る、というお話でした。

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