大阪湾のフナムシは3種類?

暖かさが増してきた今日この頃、海遊館前の岸壁ではフナムシがチョロチョロ動くのを見かけるようになってきました。
以前は大阪湾にいるフナムシは、フナムシ(学名:Ligia exotica)1種だと思われていましたが、6年ほど前にキタフナムシ(学名:Ligia cinerascens)が淡路島洲本市で見つかり、その後の調査で大阪府側の南部海岸でも確認されています。

そこで、先日出かけた大阪湾南部岬町の海岸でキタフナムシを探してみました。そこで見つけたのが《写真1》の個体。
どこがフナムシと違うのかは、海遊館前の岸壁で撮影したフナムシ《写真2》とくらべてみて下さい。まず触角の長さに注目すると、フナムシではほぼ体の長さと同じくらいですが、キタフナムシでは、体が少し曲がっているのを考慮すると体の半分ほどしかないのがわかります。さらに、写真では微妙ですが体の後ろに伸びた尾肢の基節部分(写真矢印)がフナムシでは細長いのにくらべ、キタフナムシでは太短いことでも区別できます。両種の違いは生息場所や生活様式にも現れています。例えば、これまでキタフナムシが見つかるのは転石海岸に多く、《写真1》の個体が見つかったのも転石海岸でした(《写真3》)。一方、フナムシは岩が多い岩礁性海岸や人工海岸(テトラポットやコンクリート護岸など構造物上)にもよく見られます。

ところが、上記の情報をもとに、その他の形態形質もあわせて海遊館前の個体を調べてみて、フナムシの方だと納得していたのですが、そう簡単にはいかないようです。
湾奥の人工海岸にすむフナムシは、岩礁海岸にすむフナムシと少し違うのでは?との疑問が専門家の間に持ち上がり、「第3のフナムシ?」とささやかれています。いずれは分子レベルの研究で明らかになると思われますが、今のところはフナムシとしておきたいと思います。

普通に見慣れているフナムシも調べればまだまだ面白いことが隠されているんですね。


▼《写真1》キタフナムシ(大阪府岬町の転石海岸で撮影)

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▼《写真2》 フナムシ(海遊館前のコンクリート製直立護岸で撮影)

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《写真3》 キタフナムシがすむ転石海岸(実際に見つけた場所は、写真の場所のやや陸側)
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