オシドリの雄化

9月上旬に「日本の森」のオシドリ雄がいつもより早く冬羽になっているようだというお知らせをしました。
(過去ブログ→「ちょっと早いのでは?」
同時期に他の動物園や野生下での状況を調べてみたのですが、やはり当館の雄は季節を早めに先取りしていたようです。

その後、9月中には完全に冬羽に変化しました。

▼現在のようす
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そんな時、担当から「バックヤードにいる"オシドリねえさん"なんですけど、なんか雄っぽい気がする」と報告がありました。
"オシドリねえさん"は2012年生まれの雌で、2013年から「日本の森」で展示していました。(過去ブログ→仲間が増えました

たいへん気の強いメスで、一番威張っていたため、みんなから"ねえさん(姐さん)"と呼ばれています。
昨年の6月に後輩のオシドリが繁殖した際、ヒナの安全のため、ねえさんはバックヤードに移動してもらい、隠居中のキンクロハジロ夫妻と同居していました。
ところが、秋の換羽時期より右足をかばって歩くようすがみられたため、レントゲン撮影をしたところ、骨に異常はないが、関節が腫れており、テーピングを続けています。しかし、左足で力強く歩き、普段は少し高い段の上で休んでいますが、餌の時間は真っ先に降りてきてキンクロハジロ夫妻を蹴散らして好きなものを食べるという相変わらずのねえさんです。
見に行ってみると、「あっ!」

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わかりますでしょうか?イチョウ羽があります(赤矢印)
イチョウ羽は雄の特徴で風切り羽の一部がまるでイチョウの葉のような形をしています。
他の雄の特徴である羽の胸の境の白と藍色のライン(青矢印)とか頭部の模様(黄色矢印)など、雄の特徴がみられているではないですか。
ちなみに雌の冬羽(夏羽とあまり変わりませんけど)はこのようになっています。割と茶色が多いめな感じ。

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ねえさん、環境が変わったこともあり、昨年も換羽にムラがでたりもしていましたが、まさか今年、雄の羽の特徴がでるとはどういうこと?
他の動物園の方などにも聞いたところ、カモやキジの仲間は加齢による卵巣の機能低下があるそうで、実際に死亡した雄化したオシドリを解剖したら卵巣の萎縮があったと教えていただきました。動物園でも時々はあるようです。
海外の文献でも、雄の羽を彩る遺伝子を持つ染色体は雌も持っているが、それを抑制するのは卵巣からでるホルモンであり、卵巣の機能が低下すれば抑制も取り除かれるとありました。
ただ、ねえさんはまだ8歳で、そんなに老齢というわけではないのが気になるところではあります。
足の疾病も雄化の要因のひとつかとも考えました。ただ、動物園の方によれば、卵巣の異常が足のまひに関係することはある。というのも、足の神経の基部に生殖器があるため、腫瘍化すると脚の神経を圧迫するからだということです。しかし、鳥の生殖器は通常は左側にあり、ねえさんの足の疾病は右なので、関連性はよくわからないかということでした。
現在のねえさんは9月初旬とあまり変化はなく、後頭部の羽が伸びた(黒矢印)ぐらいで、完全に雄になったというわけではありません。

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でも、ねえさんはあいかわらずキンクロハジロたちを蹴散らして餌をもりもり食べ、とても元気です。

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