マテガイ

先日、大阪府岸和田市の人工干潟の調査に参加した時、マテガイ(写真1)を見つけました。マテガイは、泥の少ないきれいな砂地にすむ二枚貝(写真2)です。ここにマテガイがいるという事は、干潟がもつ水質浄化能力と多様な生物の相互作用で良好な環境が保たれている証拠です。

マテガイは、潮が引いて干上がっている時には深く砂の中に潜っていますが、潮が満ちると表面近くに上がり、海水を吸ったり吐いたりする「水管」を水中に出して、植物プランクトンなどを食べます。マテガイを見つけるのは慣れないと難しいですが、潮が引いた時に砂の表面に水管を出す穴(「目」とよばれます)があれば、その30cmほど下にマテガイがいます。この穴に食塩をまくと、その刺激で驚いたマテガイが砂の表面から体の一部を出し、これを捕まえます(写真3)。

マテガイは、大阪府レッドリスト2014で「準絶滅危惧種(大阪府内において存続基盤が脆弱な種)」に指定されています。大阪湾では埋め立てなどで干潟などの浅場がほとんどなくなってしまい、マテガイが継続的に見つかる場所は、湾南東部や淡路島の一部に限られています。しかし最近、朗報も届いています。今回マテガイを見つけた人工干潟はこれまでの分布域より湾奥寄りですが、さらにもっと湾奥でもマテガイが記録されるようになってきたのです。これは、海の汚濁が進んでいる湾奥側で少しずつ環境が改善されてきた証なのかもしれません。保全活動を行いながら、しばらくはそっと見守って行きたいものです。

写真1:岸和田市の人工干潟で見つけたマテガイ
    殻の右側から出ているのは「足」と呼ばれる軟体部。この部分を巧みに使いながら
    砂の中を深く掘り進む。
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写真2:マテガイの貝殻
    比較のためアケガイの貝殻を方向をそろえて並べてみた。
    マテガイの貝殻が後ろに長く伸びて全体が長方形になっていることがわかる。
    *このマテガイの貝殻は、海岸に打ち上げられた死殻で、写真1の個体ではありません。
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写真3:マテガイの採り方
    左:マテガイの水管を出す穴(目)に食塩をふりかけているところ。 
    右:穴から出てきたマテガイ。一つの穴の奥深くに1個体のマテガイがいる。
    *写真のマテガイ採集地は瀬戸内海播磨灘。
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