オヤビッチャの赤ちゃんがとても愛おしいのです。

オヤビッチャは、体のシマシマ模様が鮮やかな魚で、水族館ではよく飼育されている種類です。
海遊館では、「アクアゲート」水槽と「グレート・バリア・リーフ」水槽にいて、じっくり観察すると、どちらの水槽でもタイミングが合えば、大切に卵を守っている様子を見ることができます。

オヤビッチャは、まず、オスが産卵のためのお気に入りの場所をお掃除して、そこにメスが卵を産みます。
オスは、その卵が他の魚から食べられないように守り、しっかりと酸素を届けてゴミなどがたまらないようにひれでパタパタあおいで、孵化まで大切に見守ります。

せっかく卵から赤ちゃんが生まれても、水槽の中では育つことができません。そこで!昨年の8月ごろからオヤビッチャの卵をバックヤードで育てることにしました。
はじめは、水槽の壁にくっついた卵をどうやってとればいいのかわからず...、それならば壁の手前にアクリル板を置いたら、そこに産卵してくれないかな~と思い設置してみるものの、産卵してくれず...。

次に、岩に産卵していたので、その近くに取り外しできるサンゴを置いてみると、そこにうまく産卵してくれたので、「よし!」と思い何度か続けていると怪しまれたようで、産卵してくれなくなりました。

どうしたら、バックヤードに移動できる岩やサンゴに、安心して卵を産んでくれるのだろう。観察をつづけていると、なんとなく、お気に入りの場所はわかるようになってきました。

でも、サンゴと一緒に卵をバックヤードに移動することができても、うまく生育してくれません...。どうやら、オスがヒレでパタパタするのは絶妙な水流のバランスがあるようで、ポンプを使った一方向の流れでは、孵化もその後の成長もうまくいかないようなのです。ヒレのパタパタって、すごいのですね!

また、無事に赤ちゃんが生まれてきても、全長2.5㎜ほどの赤ちゃんの餌の工夫がうまくいかず...、失敗の繰り返しが延々と続き、その難しさに心が折れそうになりました。

そして1年が過ぎ、試行錯誤を続けてきた結果、今回はじめて2㎝ほどの大きさまで成長してくれました。(いろいろ調べたのですが、近い種類の情報はあるのですが、オヤビッチャの繁殖には記録が見つからなかったのです...)

はじめは、透明で目だけが大きく目立つ赤ちゃんが、次第に白っぽくなり、その次は意外なことに真っ黒になりました。水槽の調整などで赤ちゃんが興奮すると真っ黒だった体の色が変わり完全ではないシマシマ模様が現れることがあります。どうやら真っ黒になったその下?に、あのシマシマ模様が準備されていくようで、真っ黒が薄れてくると、オヤビッチャらしい体色になったのです!(よくぞここまで~)

▼オヤビッチャの稚魚
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▼まっ黒な体がだんだんとシマシマ模様に・・・
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赤ちゃんが育つ過程で、なぜ真っ黒になるのかと不思議に思いますが、これからもいろんな魚たちをしっかり観察し、長い時間がかかっても、あきらめずに繁殖研究に取り組んでいきたいと思います。

※オヤビッチャの赤ちゃんたちは、「ぎゅぎゅっとキュート」でご覧いただけます。

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