「モルディブ諸島」水槽にアオウミガメがやってきました

アオウミガメは世界中の温暖な海で生息しており、日本周辺でも見かけることができます。
今回のアオウミガメは高知県にある海遊館の研究所、以布利センター周辺の定置網に2020年11月に迷い込んだ個体を保護したもので、その後以布利センターから海遊館に輸送しました。

しかし、搬入から20日ほどたっても餌をまったく食べてくれません。その頃、水槽の中でプラスチックのごみを見つけました。「どこかで誤って水槽に入ってしまったか」とも考えましたが、毎日のようにプラスチックのごみがみつかり、そうではないことに気が付きました。このプラスチックは外からではなくアオウミガメの体の中から出てきたものでした。以布利センターに来るまでに、海のどこかでアオウミガメが食べてしまったようです。餌を食べなかった期間は海遊館に搬入してから1か月近くにも及んだので、体力が持つだろうかとかなり心配しました。

私たちが驚いたのはこのウミガメが排出したプラスチックの量でした。初めはすぐに排泄しきるだろうと考えていたのですが、1~2日おきに合計16日間プラスチックを排泄し続け、その合計は21gにもおよびました。
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幸い、プラスチックを排泄しながらも、少しずつ餌を食べるようになりました。が、餌を食べるからと言って、ここで与えすぎると消化器官が詰まってしまうかもしれません。獣医によるレントゲン撮影や腸を動かす薬の注射の実施、そして、与える餌の量も検討しながら、慎重に餌を与えました。プラスチックの排泄が見られなくなったのは搬入から2か月ほど経った頃でした。その後は餌の量を徐々に増やし、搬入から半年ほど経った5月にレントゲン撮影をした際には、体の中にプラスチックは見られず、これですべて排泄されたと判断しました。
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実はウミガメ類がプラスチックごみを誤って食べてしまう事はよく知られていて、特にアオウミガメに多いことが分かっています。アオウミガメは主に海藻を食べ、時にはクラゲなども食べます。海水に浮くプラスチックごみは海藻がちぎれて漂う「流れ藻」や海中をふわふわと漂うクラゲによく似ていることから、海底のカニや貝などを食べるアカウミガメと比べて、誤食してしまう場合が多いと考えられています。

それから、ウミガメの体調はグングンとよくなりました。餌の時間に私たちが近づくと水面にまで上がってきて、係員を待つほどです。
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健康状態も問題なしとの獣医のお墨付きをもらったので、「モルディブ諸島」水槽でのデビューが決まりました。展示スペースには実際に排出されたプラスチックごみも展示していますのでご覧ください。

※アオウミガメはまた海に戻ることを目指しているため、期間限定での飼育展示となります。
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