真夏の異変

海遊館前の岸壁で行っている生物調査は、海底にカゴを沈めておき、3ヶ月に1回程度の間隔でカゴを引き上げて行っています。この調査で、カゴに見つかる生き物の種類や生物量が夏になると急に減少する事が分かってきました。その変化の様子がよくわかるのが写真1・2です。どちらの写真も写っているのは2段に積み重ねた同じビールケースで、調査カゴの中に入れておいたものです。写真1 は5月、写真2 は8月の調査時の様子です。5月にはびっしりと付着生物が見られ、ビールケースとはわからないぐらいですが、8月はかなり減少している事がよくわかります。この時の調査結果から、5月は生き物が約60種に対し8月は約20種に減少し、生物量もかなり少なくなっていることがわかりました。

この様な変化は毎年繰り返されているのですが、夏に生き物が少なくなる原因には海底の酸素量が大きく関わっています。海遊館前の岸壁付近の海底には、多くのヘドロがたまっています。このような場所では夏の高水温でバクテリアの活動が活発になり、多くの酸素が使われます。水温が低い季節は、水面近くの酸素を多く含む水が海底の水と混合され海底に酸素がいきわたりますが、高水温の時は上下混合が弱くなり、海底の酸素不足は深刻になります。特にカゴなどに付着して移動できない生き物が被害を受け、死んでしまう事が多いのです。対策として、ヘドロをとり除いたり潮の流れを良くする事が考えられますが、簡単ではありません。

このように酸素不足は多くの生き物にとって大問題ですが、中には少ない酸素でもへっちゃらな生き物がいて、8月のカゴの中にはそのような種類が幅をきかせていました。この話題は次の機会にご紹介したいと思います。


写真1:5月の様子。
全体的に細く白く見えているのは、ゴカイの仲間が作る管で、中にゴカイが隠れている。その他、ホヤ類・カイメン類・コケムシ類などが見えている。
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写真28月の様子。
5月にくらべ付着生物は極端に少ないのがわかる。
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