世界川の日にちなみ

9月の最終日曜日は「世界川の日(World Rivers Day)」です。

川は様々な命がはぐくまれる場所であり、かつ私たちの生活にも欠かせない場所です。
この記念日は川が果たしている様々な役割に注目し、直面している危機を知ることで、なにかできることがないかを考えるという目的があります。

この「世界川の日」にちなんで、海遊館が協力している淡水魚のアユモドキの生息域外保全事業についてご紹介します。


アユモドキは姿がアユに似ているところからこの名前が付けられたという説があります。でも、ドジョウの仲間で口にはひげがあります。

すんでいる場所は川の中、下流域、水路などですが、川の増水などで生じる一時的な水域でしか産卵をしないと言われています。
以前は琵琶湖淀川水系のあちらこちらで見ることができましたが、現在は、岡山県と京都府亀岡市でしか見られなくなってしまいました。

その原因は、治水対策により産卵場所に適した場所の減少、オオクチバスやブルーギルなどの外来魚による食害、農業の手法の変化や河川の開発や整備などによる生息環境の変化が大きな原因と考えられています。IUCN(国際自然保護連合)のレッドデータブックでは絶滅危惧種(CR)に指定されています。
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亀岡市では農業用の堰(ラバーダム=灌漑用ゴム製ダム)にポンプで川の水を注水すること(立ち上げ)で、河道内の通常干出している場所が冠水し、川が氾濫してできた草地に近い環境が作り出されます。
これにより、奇跡的にアユモドキの産卵・繁殖環境が守られてきたそうで、地元の皆さんや研究者、保全団体の方々が保全活動に取り組んでいます。
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そして2013年から環境省による生息域外保全事業がはじまりました。
域外保全とは安全な施設に生物を保護し、繁殖に取り組むことで絶滅を回避する方法です。

亀岡市で計画的に捕獲した親魚を用いて人工繁殖させたアユモドキを水族館や研究施設で預かり、育成しています。そう、海遊館ではこの事業に協力しているんです(^^)/


6月にラバーダムが立ち上がると、ダムの下流から本流までの間は一時的に水がほぼなくなってしまうので、ダムより下流にいるアユモドキの捕獲作業を行います。今年は私も参加させていただきました。

アユモドキは岩などのすき間に隠れるのがとても上手く、網や手をすき間に突っ込みながら探します。暑い中、多くの方がアユモドキを守るために参加されていました。

私もちゃんとアユモドキ見つけて、少しは貢献できたかな?(^_^;)ホッ
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捕獲したアユモドキは数や大きさ、雌雄を記録した後、ダムより上流側に放流するのですが、今年もその一部を人工繁殖の新たな親魚にすることになり、研究機関に輸送されました。
そして、親魚が落ち着いた6月中旬に採卵、採精を行いました。海遊館からもその様子を見学に行かせていただき、帰りには一部の授精卵を預かってきました。
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授精卵の受け入れは今年で3回目になりますが、私が担当になってからは初めてです。

前担当者からいろいろ情報をもらいながら準備を整えました。なんせ貴重な授精卵をお預かりするので、本当にドキドキ(T_T) 

慎重に慎重に卵を扱い、搬入2日後には約80匹の稚魚が孵化しました!
孵化4日後にはアルテミアを食べてお腹が赤くなっているのが確認できてちょっと安心。
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負担をかけるのが怖く恐る恐る撮影したらボケボケですが、お腹が赤くなっているのがわかりますか?

孵化18日後にはさらに一回り大きくなり赤虫を食べられるように!良かった~。大きくなったね~(*´ω`*)シミジミ

3か月たった9月には全長4cm程になり、体もしっかりとしてきたため、他の魚もいる予備室へお引越しすることができました!幼期に特徴的な体の太い縞模様もくっきり。
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研究機関で飼育している幼魚たちは、事業協力している各施設への引越しを環境省で調整しているところです。

これからもアユモドキの保全に貢献できるよう尽力していきたいと思います(*^-^*)

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