淀川のアユたち

昨秋、「淀川河口域を考える会」に参加した際、アユの稚魚が海遊館のすぐ近くにいるということを教えていただきました。(→ 海遊館日記「淀川河口域を考える会に参加してきました」
時期はちょうど秋から春にかけてということなので、「京の川の恵みを活かす会」の中筋祐司さんにお願いして調査を数回見学させていただきました。

中筋さんによると、稚魚のいる場所は港内あるいは防波堤や構造物に囲まれた場所で、潮の出入りはあるが流れが緩い場所であることが重要だそうです。調査は光に集まることを目的とする灯火採集なため、夕方で、潮の高い日を選ぶそうです。冬場の海遊館近辺は風が強い日が多いですから、なかなかハードルも高い!
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12月などは本当に寒いので、私たちも防寒着を着込んでもこもこになりながら見学しました。
調査時間は30分間で、集魚灯を設置したら、じっと水面を見つめます。1cm~3cmぐらいの白っぽい魚がくるよということでしたが、本当にわかるのかしら?と思っていたら、いました!
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中筋さんのおっしゃる通り、思ったよりも流れがあり、ゴカイの仲間(色はオレンジ色)や他の稚魚(カタクチイワシなど)といった生き物の他、ごみも次々と流れてくるので、その中でアユを見つけるのは慣れていないと難しいです。
カタクチイワシの稚魚は中筋様にいただいた写真をごらんください。
2205yodogawa_03.jpg ※20211127に撮影された中筋さんの写真を一部。赤矢印に注目

上がイワシ、下がアユですが、イワシは尾ビレ近くの脂(あぶら)ビレがないこと、尾ビレの付け根が黄色いこと、吻先が丸いことがわかります。また、泳ぎ方も異なりました。
当館の職員が数名で護岸をながめているので、近くを通りかかった中学生や親子連れの方が「何してんの?」と聞いてこられることが多く、「アユの赤ちゃんを探してるよ」と言うと、みなさん「こんなところに!!」とびっくりしていました。
大阪湾でのアユの稚魚については中筋さんがまとめて報告されるということなので、それを楽しみにお待ちし申し上げております。

さて、この稚魚は春になれば川を遡上し、上流域に向かいます。今の時期は上記のような白っぽい見た目ではなく、サイズは小さいながら成魚に近い姿へ成長しています。
先日、プライベートで大阪市都島区と東淀川区の境にある「淀川大堰(おおぜき)」近くまで行くことがあったので、魚のために設けられた「魚道(ぎょどう)」を確認してみました。
「新淀川」の右岸魚道は近くまで見に行くことができるのです。
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魚道の前には大きなボラがたくさんいて、肉眼で種類まではわかりませんが、小さな魚の群れがいました。おそらくアユと思います。
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私が訪れた少し前に中筋さんも見に行かれたそうですが、その時はしっかりと遡上が見られたとのこと。そして、アユをアオサギやコサギがぱくぱく食べているのもご覧になったそうです。
ん?アオサギ?君か??  
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なんだか満足そうに魚道前でたたずんでいました。

大阪湾で育った稚魚たちが遡上していく一連を見られたのは感慨深いです!
ただ、私たちが海遊館の近くで見た稚魚たち、そのまま海遊館の側を流れる「安治川」を上ったのだとすれば、こちらの「毛馬閘門」にたどりつきます。
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ここは魚道がないため、遡上はできません。
アユの稚魚たちが遡上するためにはもう少し北、舞洲の側の「新淀川」河口に向かう必要があるのです。
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緑の丸は海遊館、赤の線が安治川、黄色の矢印が新淀川河口です。

海遊館近くで観察した稚魚たちも新淀川へ移動してくれると良いのですが...
アユが大人になるためには、地形や天敵など様々な壁を乗り越えていく必要があるんですね。

でも、今の時期に遡上するアユがいるからこそ、サギたちはアユを食べて生きていくことができる、といった側面もあります。
身近すぎて当たり前になっていますが、命のつながりを感じた1日でした。

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