葛西臨海水族園とタッグで世界初の快挙達成

海遊館では、2011年からミナミイワトビペンギンの繁殖研究を継続して実施しています。
ペンギンは、水族館・動物園でとてもメジャーな生き物のひとつですが、繁殖メカニズムは謎がいっぱいです。

・いつ交尾をすれば受精に間に合うのか?
・いつ雌の体内で排卵し、何日後に卵白が付着し、卵殻が形成され産卵するのか?
・受精に必要な精子の量は?
・正常な精子の状態は?
・雌はいつから卵胞が発育するのか?
・雄はいつから精子を作り始めるのか?
などなど

海遊館では、毎年、採血をしたり、超音波検査をしたり、精子の状態を調べたり、24時間のビデオ録画による行動観察を行ったりと、少しづつデータを収集しています。

2208_iwatobi_01.jpg
▲精子の状態を調べる作業

2208_iwatobi_02.jpg
▲過去実施した人工授精の様子


人工授精にも挑戦していて、2016年には葛西臨海水族園で飼育している雄から、海遊館が確立させた技術を使って精液を採取し、液体のまま新幹線で精子を運び、海遊館の雌に精子を注入しました。
この取り組みは見事に成功し、世界初の快挙として沢山取り上げていただきました。

⇒ 海遊館ニュース「DNA検査の結果、人工受精によるミナミイワトビペンギンの雛の誕生を確認しました~本種では世界初~」(2016.6.23)

それ以降、さらなる発展を目指し、精子の「凍結保存」にステップアップしました。

▼過去のブログはコチラ
⇒ 2017.05.30「東京から新幹線で○○を運ぶ!!」
⇒ 2018.05.07「ミナミイワトビペンギン人工繁殖」
⇒ 2021.08.08「今年もチャレンジしました」

が・・・・難しい・・・

何より、ミナミイワトビペンギンの繁殖は季節性が強く、雌は1年に2個の卵しか産みません。
つまり、精子が採れる時期が限定されており、人工授精のチャンスは非常に少ないのです。
加えて、ニワトリのように雌だけを隔離すると卵を産みません。
ペアの雄と一緒に飼育している=いつでも交尾ができる環境にあるということで、ぺアの雄より先に意図的に精子を注入することは極めて困難です。

そんな中、今年は昨年海遊館で採取、凍結した精子を葛西臨海水族園に送り、人工授精にチャレンジしました。
そして某日、葛西臨海水族園の獣医さんから転送していただいたDNA検査の結果を見ると、見事、成功したんです!すぐに葛西臨海水族園の獣医さんと電話で会話し、喜びを分かち合いましたが、ちょっと興奮しすぎて、何をしゃべったかイマイチ記憶がありません(笑)

今回、葛西臨海水族園からも精子を送ってもらいましたが、諸事情により、海遊館で人工授精が実施できなかったことだけが唯一の心残りです(涙)

2208_iwatobi_03.jpg
▲今年の人工授精の様子(提供:葛西臨海水族園)


今回の成功で、凍結の処理方法や融解後も授精能力を保有する精子の状態、授精に必要な精子数などなど、成功するまでグレーだった沢山の情報が明らかになりました。
まだまだ、成功事例が乏しく、技術と呼べるほどではありませんが、飛躍的に前進したことは間違いなく、葛西臨海水族園と海遊館でタッグを組んだからこその成果です。

毎年、心が折れそうになりながらも、メンバー全員で励まし合い、諦めずにコツコツ頑張ってきて本当に良かったと思っています。これからもどんどんデータや成功事例を蓄積させ、水族館として域外保全の役割を果たしていきたいと思います!!

⇒ 海遊館ニュース「世界初!ミナミイワトビペンギンの凍結精子を用いた人工授精に成功しました!」(2022.7.5)

この記事もおすすめ!