水中超音波検査
今回は、水族館における「超音波検査」=通称「エコー検査」についてのお話です。超音波検査というと、産婦人科でお腹の中の赤ちゃんの様子を診断する検査といえば分かりやすいかもしれません。超音波は空気中では伝わりにくいので、病院で検査をするときには、トロっとしたゼリーを塗って①プローブ(探触子)を当てて検査をします。これは体とプローブの間に空気の層ができないようにする目的があります。逆に超音波が得意なのは水(液体)。空気中では伝わりにくい超音波ですが、水中では空気中の約5倍の速さ、約1500m/秒で伝播することが知られています。例えば魚群探知機でも超音波が使われていますし、イルカやクジラのエコロケーションも超音波を利用しています。水族館といえば水!つまり、超音波検査は水中で暮らしている生きものに対しては非常に有用な検査方法なのです。水中で検査を実施すれば、魚達を捕まえたり、水から上げる必要がなくなり、検査によるストレスが軽減できるメリットもあります。ただ、超音波検査の機械は精密機器で、水がかかっただけでも壊れてしまいます。ましてや海水は、機械の天敵。だとすれば、機械を丸ごと水から保護してしまえば、水中に持ち込めるのでは?と考えられたのがハウジング作戦です。水中撮影で使用されるカメラは、カメラを水中に持ち込むためにハウジングという専用の防水容器に収納して使用されています。それと同じで、②超音波検査の機械専用のハウジングを使用して、超音波検査を水中で実施したらいいのです。簡単に「専用のハウジングを利用して」と言いましたが、そんなハウジングは残念ながら簡単に手に入れるわけではありません。そこで海遊館では、(一財)沖縄美ら島財団の協力を得て、水中超音波検査を実施しています。海遊館での検査は、まだ試行中。これまで、マンボウやヤイトハタ、シノノメサカタザメやジンベエザメの水中超音波検査を実施しました。今後も、健康管理を目的に水中超音波検査を実施していく予定です。何か大掛かりな機械を水槽に持ちこんでいるダイバーがいたら、それは水中ハウジングを使用した超音波検査をしているのかもしれませんよ。
調査・研究
2025.11.11