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「無脊椎動物」の記事

紫の再来

皆様お馴染み(?)、クラゲ担当です。再来シリーズ2本目となります。前回は「目玉焼きの再来」でした。この時の経験を経て、目玉焼きクラゲこと「チチュウカイイボクラゲ」は、今のところ比較的安定して育成させることができています。成長〜。さて、今回の再来はこちら!アカクラゲに似てるけど、傘と触手が紫っぽい...?こちらのクラゲは、「パープルストライプトジェリー」という名前で北米太平洋沿岸に分布し、日本にはいません。なんと、12年振りの登場です(笑)このクラゲ、海遊館がクラゲ飼育を開始したときからポリプを管理している、文字通り古株です。多い時は1日に50個体単位でエフィラ(赤ちゃんクラゲ)を出してくれるのですが...▲ポリプから出てすぐのエフィラたちこのエフィラが全然育たない。水流をつける、流れを止める、容器を変える、アルテミアと餌用クラゲの量を増やしてみる...。どれをやっても効果はイマイチでした。なんやねん君ら。「昔はアルテミアとミズクラゲを給餌したら育ったのにな〜」という前情報はありましたが、ポリプが古いためか、全くうまくいかずに展示に至らず、月日が経っていきました。 それからご縁があり、海外でパープルストライプトジェリーを継続して飼育されている水族館の方が海遊館を訪れたこと、そして私がクラゲの勉強会に参加させていただいき、私と若手で質問しまくったことで、パープル育成は急展開を迎えます。色々なお話を要約すると、「暴力的な給餌が必要」とのことでした。そこで、餌となるアルテミアとミズクラゲの他、ワムシや加工したイサザアミ等も用意し、給餌の際は胃に餌が確実に入るよう工夫しました。▲給餌中のパープルたち成長スピードはゆっくりですが、3ヵ月以上育成し、とうとう展示できる大きさまで成長しました!今回育成がうまくいった条件としては、・ミズクラゲの他に、代替餌料が見つかったこと・初期餌料のワムシが継続して培養できたことということかな...と思っています!(ワムシも色々苦労したので、近々ブログに書きたいな...)改めて、アドバイスをいただいた園館の皆様、育成を頑張ってくれた若手たちに感謝です!この経験をパープルストライプトジェリーの継続展示や他のクラゲ育成にも活かすことができればと思っています!さ〜て、次の再来はどんなクラゲになるのやら...?クラゲ担当の模索は続く...。

無脊椎動物

2025.11.29

  • #パープルストライプトジェリー
  • #海月銀河

皮の手袋?

「アクアゲート」水槽に鎮座するこちら。皆さんはなんだと思いますか?実はこれ、ヒトデの仲間で、その名も「カワテブクロ」インド洋~太平洋などの熱帯地域に分布しますが、日本では奄美大島以南に生息します。体の中心から腕の先までの長さは8cm程になります。これがなかなかの存在感で、展示直後に館内スタッフから「あれはなんですか?」と聞かれたほど。皮(革)手袋というと...汚れていてわかりにくいですが指の部分が太くて厚みがあるところなどは確かに似てる?一般的にヒトデは触ると固いのですが、このカワテブクロは革手袋のようにすべすべとしているそうです。そう言われると触ってみたくなります。最初の写真のカワテブクロですが、擬サンゴの上に1匹、裏側に1匹いますよね?仲良しか?(笑)ただ、その場所は以前 「好みの隠れ家」 でコクテンフグがくつろいでいた場所じゃないですか。好みの場所を奪われたコクテンフグは?というと、所在なさげに水槽の端でうろうろしていました。存在感のあるカワテブクロの圧にはあらがえなかったのかもしれません。コクテンフグが不憫になりました。その後、若干擬サンゴなどの模様替えがあり、新たな隠れ家ができました。別の日に見てみると、カワテブクロ1匹は別の場所にいて、もう1匹は先日、模様替えをした新しい隠れ家にいました!そして、コクテンフグはというと、 その隠れ家の上にいる!別のフグはこれとは別の場所を見つけたようです。よかったね。朝の楽しみが増えました。

無脊椎動物

2025.10.13

アオリイカの展示

ただいま「特設水槽」 では、アオリイカたちがすいすいと泳ぐ姿をご覧いただけます。光を受けながら体の色が変わる様子はとても幻想的で、つい見とれてしまいます...。さらにイカたちに加えて、マイワシの群れやクロホシイシモチも泳ぐ豪華ラインナップになっています~。イカと魚の群れを作る性質は、見れば見る程面白いものです...。そして実は...バックヤードでもイカを卵から育てる挑戦をしています!今では頭胴長約15cmにまで成長してくれました(^^ このサイズまで育っているのは、なんと "海遊館初!"なのです☆ ( これまでのチャレンジも見てください~ → 「海遊館でのアオリイカ育成」)イカはとてもデリケートな生きもので、エサや環境づくりには配慮が欠かせません。担当飼育員は日々試行錯誤しながら育てています...。特にイカは食欲旺盛なため、毎日のエサに工夫が必要です!「今日はシラスを食べたよ~。」「キラキラしたものの方が反応してくれるね。」など、毎日話し合いをしています!早く「特設水槽」にデビューして、みなさまに見ていただけるよう、日々奮闘中です!(>_<)!ぜひ海遊館で、イカの美しい世界を体感してみてくださいね ~くコ:彡

無脊椎動物

2025.09.22

  • #アオリイカ

クリオネのお食事事情

小さな白い体を持ち、羽ばたくように泳ぐ姿が人気のクリオネ。 日本名では「ハダカカメガイ」といって、名前のとおり貝の仲間です。水中を泳ぐための翼のような部位「翼足(よくそく)」を持っていて、名前の「ハダカ」は貝類の一番の特徴ともいえる貝殻を持たないことが由来です。貝類の中では、「裸殻翼足類」(らかくよくそくるい)に属しています。ここで少し疑問に思われたかもしれません。「裸殻ということは、殻があるグループも存在する?」と。そのとおり!殻を持った「有殻翼足類」(ゆうかくよくそくるい)の貝もいるんです!クリオネほど名前がよく知られている生きものはあまりいませんが、代表として「ミジンウキマイマイ」をご紹介します。 ミジンウキマイマイは、こちらもグループ名のとおり、殻を持った翼足類の貝で、写真の下側が殻、そして殻から翼足を出して羽ばたきながら泳ぎます。殻をよくご覧いただくと、巻貝であることもお分かりいただけると思います。実は、このミジンウキマイマイはクリオネの大好物♡どちらも冷たい海域で暮らしていて、クリオネはミジンウキマイマイを見かけると普段の愛らしい姿から一変、頭部から「バッカルコーン」という触手を伸ばし、捕食します。 バッカルコーンを出す姿は水族館ではあまり見かけることがありませんが、時々何かの拍子にその様子を見せてくれることがあります。見れたらラッキー!クリオネの水槽を見かけたら、ぜひチェックしてみてください。

無脊椎動物

2025.09.19

  • #ハダカカメガイ

ビゼンクラゲのビゼンとは??

2022年以来3年ぶりにアリアケビゼンクラゲの期間展示を開始しました(→「お久しぶりのデカいやつ」)。やはり迫力がありますね。採集に出発前、「今年は展示を成功させるぞ!」と準備に意気込む担当者に、私、疑問を投げかけました。「ねえ、なんで有明海で獲れるのにビゼンクラゲなん?ビゼンって岡山のことよね?」すると、「昨今の研究で、有明海で捕獲されるビゼンクラゲは "アリアケビゼンクラゲ" とされていて、他地域にいるビゼンクラゲとは別種といわれているんですよ」との答えが返ってきました。さらに「有明海ではアリアケビゼンクラゲは "赤クラゲ" と呼ばれていて、他に "白クラゲ" と呼ばれるヒゼンクラゲもいます」とも。ん?混乱する~。「肥前」とは佐賀県と長崎県のあたりをさすので、有明海を含む場所であり、そこからついた名前であろうことはまあわかります。ややこしいなあ~。それはそれとして、ビゼンクラゲのビゼンはどこからきたのという謎はまだとけてはいません。ということで、調査開始!まずはビゼンクラゲを見つけた方は誰かを調べました。学名に Rhopilema esculentum Kishinouye, 1891 とあるので、1891年にキシノウエという方が発見したことがわかります。この方は日本水産学界の発展に寄与した東京帝国大学の岸上鎌吉氏であり、1890年(明治23年)に岡山県の児島郡で採取したものを命名したのだそうです。でた!岡山つまりは備前国!!備前国とは岡山県の東南部に位置する旧国名で、玉野市や瀬戸市、備前市、岡山市の一部などを含みます。「ビゼン」はここからきていたのね。備前国では奈良時代に加工したクラゲを朝廷に収めていた記録があるぐらい、昔から食用クラゲの産地だったそうです。ちょっと時代はとびますが、江戸時代には岡山藩から幕府へ毎年クラゲを献上していたくらいに名産だったそう。岡山県の統計年報によれば、記録がある明治30年頃から大正時代にかけては10~90トンほどの漁獲量があり、ビゼンクラゲは岡山の主要な特産物だったことがわかります。岸上氏が命名したのは明治23年ですから、ちょうど岡山でビゼンクラゲが多く獲られている頃に名付けたのではないでしょうか。しかし、昭和に入る頃には漁獲量が激減し、昭和6年には0となってしまいました。数年後には統計年報からとうとうビゼンクラゲの項目は消滅...。実は、岡山のビゼンクラゲはどこにでもいたのではなく、当時、遠浅の広大な干潟をもつ児島湾内のみに生息していました。児島湾は岡山市の南部にあります。汽水域を好むとされるビゼンクラゲは有明海と同じような環境である児島湾にいたというのが興味深いところですし、児島湾の中でも大きな川が近い地域のみで漁が行われていたことがわかっています。児島湾は古代から干拓が行われていましたが、明治以降、干拓が進んだことや湾の締め切り等によって海の状況が変化したことがビゼンクラゲの生息に影響したと考えられます。その後のビゼンクラゲは戦後から昭和40(1965)年頃まではわずかに存在していたようです。2002年には広大の上氏らが瀬戸内海沿岸の漁業協同組合161か所にアンケートを行い、直近20年のクラゲ出現動向を調査されました。その結果、ビゼンクラゲについては95%以上の方が「知らない、全く見たことがない」と回答したそうです。2020年の岡山県版レッドデータブックでもビゼンクラゲは絶滅危惧種とされていて、岡山の名産だったビゼンクラゲはいなくなってしまったことを痛感します。尚、岸上氏が命名したビゼンクラゲの色は青かったとのことですが、明治26年(1893年)には有明海から赤い食用クラゲが報告され、標本を検討した結果,ビゼンクラゲとは色が異なる同種であるとされました。これがアリアケビゼンクラゲです。岸上氏は続いて明治30年(1897年)に有明海から別の白い食用クラゲを記録しました。こちらは後に Rhopilema hispidum のシノニム(同じ種類に対して複数の学名がつくこと)とされ、和名は肥前国にちなんでヒゼンクラゲと命名されたのです。そういえば、ヒゼンクラゲは高知でたまに入網するそうで、以布利や室戸方面の漁獲物を調べていた係員が写真を撮っていました。当館での展示経験は、担当によると「ビゼンと一緒に獲れて展示したことがあったかもしれない??」ということでしたが、また調べておきます。「お久しぶりのデカいやつ」で担当が書いているように、アリアケビゼンクラゲは「ビゼンクラゲ」とか「ビゼンクラゲの一種」と記載することが多かったのですが、このたび当館では2022年に発行された「クラゲの図鑑」に準じて、和名:アリアケビゼンクラゲ、学名:Rhopilema esculentum と記載することにしました。また、同じく「ビゼンクラゲの一種」と呼ばれているビゼンクラゲは?というと、スナイロビゼンクラゲと呼びます。スナイロ?これまで海遊館のクラゲをみてきてくださった方はあれっ?って思うかもしれません。なんか聞いたことあるような??例えばこちらのブログ「久しぶりに大きく育ちました」では、「スナイロクラゲは夏場に展示する大きなビゼンクラゲにとても近い仲間で、"砂の色"をしていることからその名前がついた」と書いてます。このスナイロクラゲもスナイロビゼンクラゲとよばれることになったというわけ。ちょうど、今、当館育ちのクラゲを展示中です。スナイロクラゲはウチダザリガニの命名者である北海道大学名誉教授の内田氏が1927年に陸奥湾および東北地方日本海沿岸に発生する種を Rhopilema asamusi と命名しました。当時、太平洋亜熱帯水域に分布するアリアケビゼンクラゲやヒゼンクラゲとは明らかな生息水域の違いがあるとしていましたが、このたび、スナイロクラゲ改め、スナイロビゼンクラゲとなり、学名はスナイロクラゲの Rhopilema asamusi が採用されました。スナイロビゼンクラゲの生息地は東北から九州にかけての日本沿岸、色も砂色?とか青とか白あって本当、クラゲ勉強中の私には理解が難しゅうございました。 何はともあれ、ビゼンクラゲの「ビゼン」の意味がわかり、私は大満足なのですが、岡山のクラゲのことを思うと切ない気持ちにもなりました。有明海ではアリアケビゼンクラゲがずっと生息し、ずっと有明海の名産であったほしいと祈るばかりです。

無脊椎動物

2025.08.13

  • #ビゼンクラゲ

お久しぶりのデカいやつ

海遊館クラゲファンの皆様!朗報です!!この度、3年ぶりに大きなアリアケビゼンクラゲを展示しました!!!デカい!!拍手!!!!8月の頭、先輩社員と採集のために福岡県に赴きました。クラゲ担当3年目の私はアリアケビゼンクラゲの採集に行くのが初めてなので、ドキドキわくわくです...!有明海周辺の福岡県柳川市は、「クラゲ漁師」がいる町として知られ、漁獲されたアリアケビゼンクラゲは塩漬けやミョウバンにより加工され、中華料理の高級食材等になります。また、地元ではお刺身として食べる文化があるのだとか!採集のために前日入りしていたので、事前情報でそれを聞いていた私は「これはぜひご賞味せねば!!」と地元のスーパーに意気揚々と飛び込みましたが、お刺身用のクラゲは売り切れでした。残念。さておき、当日はクラゲ漁師の船に乗せていただき、漁に同行させていただきました。事前情報では、今年は船の上がクラゲだらけになるほど大量にいると聞いていたのですが、刺し網(生きものの通り道に網を張る漁法)には最初全然かからず、心臓がキュっとなりました...!しかし、そこはその道ウン十年の大ベテラン漁師さん!たくみに船を操り、形のキレイなクラゲを次々とゲットすることができました!素晴らしいっ!その後、大阪へとんぼ帰りし、クラゲの搬入を行いました。さすが傘径50cm。めちゃくちゃ重い...!丁寧に海水の濃度と水温を調整し、時間をかけて搬入しました。リリース!無事に展示デビューです!さて、こちらのアリアケビゼンクラゲですが、海遊館では以前まで「ビゼンクラゲ」という名前で展示していました。ところが、同じく「ビゼンクラゲ属の一種」と呼ばれているクラゲがいました。それがこちらのスナイロクラゲです。実はこの2種、最近の研究で別種の可能性が出てきました...!このまま同じ名前を使うのは、ややこしい!というわけで、この度「アリアケビゼンクラゲ」と「スナイロビゼンクラゲ」という名前に改名されました!こちらのスナイロビゼンクラゲも「海月銀河」にて展示中なので、どこが違うのかじっくり見比べてみても良いかも知れませんね。心機一転、名前も新たになった、お久しぶりのデカいやつ!ぜひぜひ「海月銀河」でご覧ください!!!

無脊椎動物

2025.08.05

  • #ビゼンクラゲ

アオリイカの三角関係

こんにちは。連日とても暑い日が続き、今年は梅雨だなと感じる間もなく梅雨明けしましたね。今日は「特設水槽」にいるアオリイカの繁殖行動の様子をお話します。アオリイカは主に、春から夏にかけて繁殖を行います。海遊館においても、同じ時期に繫殖行動が行われます。水槽の擬海藻をよく見てもらうとサヤエンドウのような卵のう塊が付いています。↑産み付けられた卵のう塊アオリイカの繁殖行動はオスが精きょうと呼ばれる精子が入ったカプセルのようなものをメスに渡すという方法です。繁殖期になると1匹のメスに複数のオスが求愛する様子や、交接する様子が見られます。 オスはメスをめぐりオス同士で争い、時には嚙みつかれて傷がつくほどの個体もいます。大きなオス個体が争いに勝つ場合が多いです。動画においても、ペアになったオス(一番体が大きく、体色が濃くなった個体)が他のオス(画面中央の最下の個体)を威嚇する様子(0:01頃)や、メスを守って寄り添って泳ぐ様子(0:04以降)が見られ、争いに負けたオスはペアから離れます。しかし、負けたオスは繁殖行動に参加できないという訳ではありません!スニーキングという繁殖戦略をもっているのです。スニーキングとはペアになれなかったオスがペアオスの隙を狙い交尾を試みる方法で、スニーカーと呼ばれます。スニーキングはサケ科魚類などにも見られます。 動画ではペアになったオスとメスが産卵している様子、先ほどペアのオスに負けた、スニーカーのオス(最下から右側に泳いでいく個体)が卵のう塊を触りながら(0:00~0:03頃)、産卵しているペアのメス(0:13頃)の体色に紛れてメスに近づき、交尾の機会をうかがう様子が見られます。スニーカーオスは、強い個体ではないものの、限られた機会を捉えて子孫を残すための戦略としてとても重要です。繁殖行動を見ていると、生きものの戦略や、強さに改めて感心します。アオリイカの産卵行動は海遊館では主に朝から昼にかけてよく観察できます。是非、アオリイカの動きや鮮やかな体色の変化をみてください!

無脊椎動物

2025.07.23

  • #アオリイカ

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