ジンベエザメの調査

ジンベエザメは、今では知らない人がいないほど有名ですが、まだまだ生態などに謎が多いサメです。日本には春から秋にかけて来遊してくるのですが、どこから来てどこへ行くのかは、はっきり分かっていないのです。これを解明することが、ジンベエザメの保護、保全に繋がると考えています。

海遊館では、2011年から北海道大学と共同で、ジンベエザメの回遊経路調査を実施しています。2023年9月、大阪海遊館海洋生物研究所以布利センターで飼育していたジンベエザメを放流しました。放流時には、ジンベエザメに「衛星タグ(データロガー)」を装着するとともに、新たに神戸大学・海洋政策科学部と共同でジンベエザメに「カメラロガー」を装着し、海でどんな行動をしているのかを調査しました。

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▲ジンベエザメを放流する様子。
右の胸鰭にあるピンク色の物(黄丸印)がカメラロガー、背鰭付近にある黒い物(赤丸印)が衛星タグ


衛星タグは、放流から1か月後に自動でジンベエザメから切り離され、衛星経由で回遊記録を取得できます。一方、カメラロガーは放流から6時間後にジンベエザメから自動で切り離されます。撮影データを取得するには我々がカメラを直接回収する必要があります。放流後のジンベエザメがどこに行くのか予想がつきませんが、これまで海遊館が以布利沖から調査放流したジンベエザメの回遊経路(放流後、まずは南東に泳いでいく傾向)から想定することにしました。

今回のカメラロガーの回収には、高知県土佐清水市の遊漁船FISHING GUIDE OCEAN沖吉丸様にご協力いただきました。

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▲沖吉丸


カメラロガーがジンベエザメか切り離される1時間前に港を出発し、ひとまず南東に向かって進みました。放流時刻が9時頃、カメラロガーがジンベエザメから切り離されるのは、タイムラグを考慮して14時30分ごろでした。

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▲出港後の写真


13時30分に港を出発し、南東に向かうことおよそ1時間、10kmほど進んだ地点は陸地がほとんど見えず、周りは海に囲まれていました。ちょうどカメラロガーが切り離される時間となりました。すると、回収に同行しているカメラロガー調査のスペシャリストである、神戸大学の岩田先生がゴソゴソと何かを取り出しました。アンテナです。何に使うのかというと、カメラロガーのおおよその位置を確認するために、カメラロガーから発信される電波をアンテナと受信機で探索するためだそう。こんなので分かるのかな?と思っていましたが。。。なんとこの時点で電波の反応があったのです!
慎重に電波を探りながら、船をゆっくり進ませてカメラロガーを探します。時々先生や船長が「あれじゃない!?」といって見に行ったら海洋ゴミだったりブイだったり。。。

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▲カメラロガーの発信機から発する電波を探索している様子


引き続き電波を頼りに探すこと1時間、先生が「ありました!あそこ!」といいます。周りの人は思いました。。。「どこに?」。時刻は15時半ごろで、太陽の光が斜めから海面にあたり、鏡のようになっているので海面に何が浮いているのか全くわかりませんでした。

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▲夕方の海面の様子


先生は「200mくらい先にあります!」といいますが、やっぱりわかりません。
船を近づけてよーーく見ると、、、ありました。カメラロガーです!
↓この写真の中にカメラロガーがあるので探してみてください。

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▲100m先にカメラロガーが浮かんでいる


正解はこちらです。

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▲カメラロガーの位置


わかりませんよね。大海原で電波を頼りにカメラロガーの場所を探し当て、200m先でも目視で見つけることができる先生の技術と経験に脱帽です。

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▲カメラロガー回収!
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▲回収したカメラロガー


港に帰港し、早速映像を確認します。すると、ちゃんと録画できていました!


約5時間の撮影時間で、「キハダ」と思われる魚が近くを泳いで行ったり、他の魚もジンベエザメの前を通った映像が記録されていました。
さらには、深度約150mまで潜っていたことも確認できました。

今後もさらに映像を解析して、ジンベエザメが自然の海でどのような行動をしていたのかを調べていきます。

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