ゾウギンザメ(大事なことなので、もう1回紹介させてくださいっ)

先日の海遊館日記「象・銀・鮫!」でお知らせ済なのですが、何度みても不思議すぎる生き物なので、個性的な外見やその後の様子を加えて、もう1回、詳しく紹介したいと思います。よろしくお願いします!

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ゾウギンザメ(Callorhinchus milii)。全長約80㎝。

ゾウギンザメって?

実は、サメやエイに近い仲間なんです。(どうみても、サメっぽくは、ありませんが...。)

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※やわらかい骨の魚について、詳しくは、機関紙かいゆう「やわらかい骨を持つ魚の話(軟骨魚類博物誌)」をご参照ください。

ゾウギンザメの分類を詳しく紹介すると次のようになります。

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学名にあるCalloの部分は、ギリシャ語のkalos,kallos (美しいという意味)が由来で、その後ろの部分のrhyngchosは鼻を示しています。美しい鼻を持つ魚 なんですね! miliiの由来は不明ですが、ラテン語で「千(1000)」という意味があるそうです。

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そして、この象の鼻のような部分(吻端、ふんたん)には、微弱な電場(でんば)や磁場(じば)を感じとることが出来る「ロレンチーニ瓶(感覚器官)」が備わっていて、餌を見つけ出すことに使っているようです。 個人的にはフックに見えます(笑)

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海底(水槽の底)に鼻をつけて、餌を探す行動がよく観察できます。
また、この「ロレンチーニ瓶(器官)」は、ジンベエザメをはじめ、サメやエイ、そしてギンザメの仲間(やわらかい骨を持つ魚の仲間)にあるんです。よ~く見ると、観覧通路からでも観察できます!

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私のおすすめ観察ポイント

1.美しい銀色の体色とゼブラっぽい模様(ごく最近、「日本海溝」水槽の照明を新しく変更したのですが、スポット照明の下を通った時が一番かっこいい!)

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2. 胸鰭をやわらかく動かして遊泳する様子


3. 実は第一背びれの前に大きな棘があります!(カッコイイ!)

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全ゲノム解読

2014年にゾウギンザメの全ゲノムが解読されました。これにより、知られている脊椎動物の中で最も原始的ということが明らかになり、免疫力の強さも注目されています。 (ちなみに、ゾウギンザメの全ゲノムは約12億塩基対、ジンベエザメは38億塩基対、イヌザメは47億塩基対、トラザメは67億塩基対、シーラカンスは27億塩基対、ヒトは32億塩基対です)
※2018年、海遊館と理化学研究所などの共同研究で、ジンベエザメ、イヌザメ、トラザメの全ゲノム解読を行いました。詳しくは、こちらのニュースをご覧ください。「サメのゲノム解析について、記者発表しました。」

そもそも、どこに棲んでいるかといいますと...

南オーストラリア~ニュージーランドの限られた地域にだけ生息しています。(地図の赤色で示している地域)

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ニュージーランドでは原住民族のマオリ語でMakorepe、repe、reperepeとも呼ばれており、Mako=「サメ」、repe=「でっぱり」などの意味があるそうです。鼻がでっぱった見た目からこの名がついたと考えられています。 とても特徴的なゾウギンザメですが、現地ではヒラメなどを狙った底引き網や刺し網などでよく混獲される種類で、釣りでもよく釣られます。さらに、現地ではフィッシュアンドチップスとして加工されるポピュラーな魚だそうです。
※尚、本種は、生息数の減少を心配して、1986年に総漁獲量制限(TAC:Total Allowable Catch)が設けられているため、現在の生息数は安定しているそうです(ホッ)

エサを食べるのが...

ゾウギンザメは、主に貝類や無脊椎動物など、海底で暮らす生き物をその特徴的な吻端で探り当てて食べています。海遊館では、魚やイカなどを与えていますが餌を食べるのはあまり上手ではありません...。

1回キビナゴを食べ損ねました。



一方、殻を開けたアサリを与えてみると...。


器用に身だけ食べて殻は吐き出しました。 これを見るとやはり貝類を食べることが得意だとわかりますね。

これからの目標

  • 海遊館では、共同研究でゲノム解析などを行っており、昨年はトラザメ、イヌザメ、ジンベエザメの全ゲノム解読に成功しました。既に知られているゾウギンザメの全ゲノムと比べることで、生物学的な特徴や飼育に関わる知見、人間にもつながる新たな発見を期待しています!
  • 生理学的研究をはじめ、水族館ならではの知られざる生きた姿の研究を行っていきます!
  • 現在飼育しているのはメスの個体だけなので、オスを搬入して繁殖を目指したいと考えています!
    ...と、思っていたのですが、なんと、ゾウギンザメが産卵したのです!
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細長くて両端が尖った形の卵(卵殻卵、らんかくらん)を3週間で8個産みました。

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ギンザメの仲間は、体内に精子を貯めておくことができることがわかっています。もし、受精卵だったら...、小さなゾウギンザメの赤ちゃんを見ることができるかもしれません。

これからも大切に飼育して、未知なる生態を解明していきたいと思います。

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