フサギンポ

2020年7月から「アリューシャン列島」水槽に仲間入りした2尾のフサギンポについてお話します。
水槽に本当にいるの?と聞かれますが、底の岩の隙間やパイプの中に隠れているので存在感がとにかく薄いのが悩みです。
そんなフサギンポですが、展示当初よりダイバーにすぐ慣れ、給餌の日でなくてもまとわりついてくるようになりました。
2尾の見分け方は、黒っぽい体をしている方を「黒」、白っぽい体をしている方を「白」とそのままで呼んでいます。

現在は3日に1回ダイバーが潜って給餌しています。

2103_husa_01.jpg

2020年12月に入ってから白がいつもと違う場所にいることが多くなりました。
しかもよく見るとお腹が大きい・・・
これはもしやと思い観察を続けていました。
そして12月8日には白がしっかり卵を守っている姿を見つけました。


調べるとフサギンポはメスが卵を守るということで白もしっかり守る様子が観察できました。
卵を産んだはいいが、この卵は有精卵なのかという疑問が上がりました。
もう1尾の黒が白と一緒にいる姿を見たこともないし、いつも下層にいるので白がいる上層まで本当に行ったのかなぁと怪しんでいました。
産卵確認から約2週間経った頃に卵を一部とり、顕微鏡で確認したところ中で稚魚が動く様子が確認出来ました。


2103_husa_02.jpg

有精卵と分かると次は卵をいつ回収するかという問題が出てきました。
なぜなら産んだ場所が水がどんどん吸われていく場所付近で、孵化しても稚魚がすぐに吸い込まれてしまうからです。
本来なら孵化まで白に守ってもらうのがベストですが、孵化しても稚魚を回収できないため、卵を移動することにしました。
2021年1月3日に卵塊の一部をバックヤードに移動したところ、しっかり目も確認できるようになっていました。

2103_husa_03.jpg

魚類チームのメンバーにも相談し、早めに全部移動した方がよいとなり、1月7日に全ての卵をバックヤードの専用容器に移動しました。
回収する際、白が卵を守るため小さな体で一生懸命ダイバーに向かってくる姿には感動し、母の愛を強く感じました。
2月初旬が孵化予定と予想していましたが、それよりも少し早くぱらぱらと孵化が始まり、1月終わりには孵化が完全に終わりました。
孵化した稚魚は餌を食べ始めてはいましたが、こちらの力不足でうまく育てることができませんでした。

しかし今回の産卵から孵化を経験し、得た反省点を次につなげていきたいと思います。
海で見た、チビフサギンポの愛らしさに心を奪われた私としては、是非多くの人にフサギンポの愛らしさを伝えられればと思います。
それまで白と黒が、また卵を産もう!と思える環境を整えていきたいと思います。

この記事もおすすめ!