オヤビッチャとクリスマス

オヤビッチャは温暖な海域の岩礁やサンゴ礁にすむ魚類で、日本では暖かい黒潮の影響を受ける太平洋沿岸に分布しています。ちなみに、海遊館ではグレート・バリア・リーフやモルディブ諸島をテーマとした水槽に展示しています。このオヤビッチャですが、実は海遊館前の天保山岸壁にも夏から秋にかけてやってきます。

昨年の9月に天保山岸壁のオヤビッチャの群れを撮影したのが 動画1 です。
今回は、このオヤビッチャの群れがいつまで見られるのかを1週間に2回程度の頻度で岸壁上から観察する事にしました。その結果、最後に確認できたのは11月20日で、その時の海水の表面水温は19.7℃。その後、オヤビッチャは確認されず、12月5日に表面水温が14.9℃まで低下している事を確認して観察を終えました。どうやら15℃付近が生存限界か?オヤビッチャはどうなったのか?と疑問が残りました。

12月25日のクリスマスの日、思いがけない発見がありました。この日は岸壁に沈めたカゴ(口は広く開けた状態で出入りは自由)を引き上げて生物を調べる日です。この中にオヤビッチャが1尾入っていたのです。この時の表面水温は14.3℃、海底は14.6℃でした。「お前生きていたか!」とおもわずオヤビッチャに触れましたが動きが鈍く、どうやら凍死寸前かもしれません。この時撮影したのが 写真1 です。暴れずにすんなり全長計測できたのは良かったのですが、体が黒っぽい事からも衰弱が伺われます。その後、23℃の水槽に収容し養生した結果、1月6日現在元気に餌を食べてくれています。

通常、大阪湾の水温は2月頃に10℃前後と最低になり、とてもオヤビッチャは生きていけないでしょう。しかし、今回のオヤビッチャとクリスマスいう組み合わせは、将来、温暖化により季節感が変わってくる予兆にも思えました。


動画1:天保山岸壁のオヤビッチャ(2021年9月撮影)


写真1:カゴの中に入っていたオヤビッチャ(2021年12月25日採集)
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